■ 第30回 ここまでやってもクビにはならない?
前回まで、
世の中の「解雇」は、
多くが「不当解雇」
であることを見てきました。
前回までの記事:
正当な解雇というのは
非常に条件が厳しいのです。
具体例を挙げると、
びっくりされる方が多いでしょう。
今回から、
「そんな場合でも不当解雇になるの?」
という意外なケースを見ていきます。
●犯罪を理由に解雇
私生活で窃盗を繰り返し、逮捕。
逮捕を理由に、解雇された・・・
多くの人が、
「それは解雇されても仕方ないだろう」
と思うかも知れません。
ところが、これで即解雇すると
不当解雇になってしまいます。
業務と関係がないところで
犯罪を犯したとしても、
直接解雇理由にはなりません。
ですから、
「逮捕された奴なんか、クビだ!」
という理屈は通用しないのです。
住居侵入罪で解雇された人が、
会社を訴えて
不当解雇を認めさせた事例もあります。
ただ、犯罪が
「業務に関連する」
ことであれば解雇は正当になります。
・会社のお金を横領した
・内部情報を使い、株でインサイダー取引をした
こうした場合に解雇されても、
さすがに不当解雇にはできません。
懲戒解雇されても
まったく文句が言えないケースです。
「業務と関係ない犯罪を理由には、
解雇できない」
ということですね。
次回は、
「差し押さえをくらった社員を
解雇することはできるのか」
を見ていきます。
このまま、下の記事にお進みください。
■ 第31回 ここまでやってもクビにはならない?2
前回に引き続き、
「ここまでやってもクビにならない」
事例を見ていきます。
●差し押さえをくらった社員を
解雇することはできるのか
クレジット会社や消費者金融から
お金を借りて返さない・・・
税金を払っていない・・・
こういう場合、会社へ
「給料差押通知」
を送りつけられることがあります。
「あなたのところの社員が、
払わなければいけないお金を払いません。
なので、給料の一部を、
直接こちらへ払ってください」
というわけです。
クレジット会社や消費者金融の場合、
差押えをする前の段階で裁判を起こしてきます。
(というよりも、そういう手順を踏まなければ差押えができません)
ですので、その段階で決着をつけておけば
会社にまで連絡がいくことはありません。
しかし、税金を滞納している場合、
突然会社に差押通知が届くこともあります。
そういった場合、
「社内の風紀を乱した」
といって解雇することは可能でしょうか?
結論から言います。
差押を受けたからといって解雇すると、
それは不当解雇になります。
金銭問題を起こしたといっても、
「会社のお金を使い込んだ」
わけではありません。
業務と関係がない部分での金銭問題は、
解雇事由にするには弱すぎるのです。
「金銭で問題を起こした社員だから、
いずれ会社のお金にも手をつけるのでは・・・」
社長がそんな不安を抱いたとしても
無理はありません。
ですが、それを理由に社員をクビにするのは
やり過ぎなのです。
「お前は道に落ちていた
100円を自分のフトコロに入れた。
金に汚い奴だから、
いつか会社の金を横領するに違いない」
という言いがかりをつけているのと
同じだからです。
関連記事:
では、解雇まではいかなくても、
始末書を書かせたりといった処分はどうでしょうか?
これもアウトです。
業務と関係のないところで起こした不祥事は、
懲戒処分することもできません。
ですが、こういった事態になった場合・・・
始末書を書かせたり、
降格処分にする会社はゴロゴロあります。
どのみち、辞めることになる
可能性が高いのは確かです。
そういう状況で会社に勤め続けるのは、
精神的につらいでしょうから。
ですが、本来は辞める必要もないのに、
退職に追い込まれるのです。
おとなしく自己都合退職するのは、
お人好しすぎるのではないでしょうか。