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■ 第111回 クビにする前に考えよう

(2017年2月21日更新)

連日、

解雇、派遣切りのニュース

が報じられています。

 

誰でも知っている大企業が

あっさり人減らしに乗り出したことで、

中小企業も右に習えで人切りを始めたようです。

 

実際、私のところに寄せられる相談で

「派遣切りされた」

という方が極端に目立ちます。

 

派遣切りされて悔しい
派遣切りされて悔しい

 

ただ、安易にクビにする前に、

経営者の人は

少し考えてみてもよいと思います。

 

軽い負担で、

雇用を継続できる制度があるからです。

 

従業員を休ませた場合、

企業は休業補償として

給与の6割を支払わなければなりません。

 

しかし、これは一部国に負担してもらえます

(休業助成金)。

 

中小企業の場合、

休業補償5分の4、

最高3年で200日まで支給されます。

 

もともと、休業補償の一部を国が負担するのは

「雇用保険加入暦6ヶ月以上」

に限られていたのですが、

2008年12月から特例として

この条件が撤廃されました。

 

休業助成金の額は大きい
休業助成金の額が、思った以上に多くてビックリ

 

雇用保険加入期間が6ヶ月未満の人、

雇用保険未加入でも

週20時間以上の労働時間で

6カ月以上雇用されている非正社員らも

対象になっています。

 

この制度を利用すれば、

クビにしなくても

ごく軽い負担で

雇用者を休業させておくことができます。

 

給与の6割(休業補償)

×5分の1(休業補償の企業負担分)

ですから、

給与の12%で

雇用を確保しておける計算になります。

 

問題は、

中小企業には

このような制度を知っている経営者が

ほとんどいないことです。

 

結果として

「企業が生き残るには、従業員をクビにするしかない」

と安易な結論に至り、

暴走してクビ切りを始めます。

 

困ったことに、

「非情な決断を下した自分」

に酔っている経営者の方までおられます。

 

簡単にクビを切る社長の下で

働いておられる方は、

この制度をさりげなく

アピールしておいたほうが

いいかも知れません。

 

企業負担分が

1割強にまで落ちるのであれば、

クビにすることを思いとどまる可能性も

出てくるはずです。

 

もし、仕事の量が戻ってきた場合、

また必要な人員を採用して、

さらに教育していくのは、

企業にとっても

大きな負担になるからです。


関連記事:

雇止めが合法になる条件

どうなる雇用調整助成金


■ 編集後記

こういうネタを書くと、

「得する退職の方法」

を売っている私としては不利になります(笑)

 

しかし、最近の解雇乱発は

異常事態と呼んでもいいレベルですので、

少しでも予防策になればと思い書きました。

 

救済制度自体はある程度あるのですが、

問題は

「会社側が全くそれを把握していない」

ことです。

 

実際、今回紹介した制度を利用しているのは

自動車産業が過半数を占めています。

 

利用しているのは大手企業中心、

ということが分かります。

 

結果として、中小企業では

「給与を全額払うか、クビにして0にするか」

と極端から極端に走っているのが

現状ではないでしょうか。

 

2.休業助成金制度、詐欺の食い物にされる

さて、この「休業助成金」制度。

 

2017年現在で振り返ってみましょう。

 

2017年時点では、

リーマンショックの後遺症があった頃とは

全く異なり、一転して

「人手不足」

が言われています。

 

このため、無理をして

社員を休業させる必要がある企業は、

割合としては大きく減少しているでしょう。

 

しかし、この休業助成金制度を悪用し、

さんざんしゃぶり尽くした悪党もいます。

 

その手口はこうです。

 

1.「休業した社員がこれだけいます」

と国に報告。

 

2.休業助成金を受け取る

 

3.実際は、休業した社員はおらず、

従前と同じように働いている

 

このため、2.でもらった休業助成金は、

会社が国からもらった「お小遣い」

になってしまう。

 

一般的に、労働関係の法令にうとい

中小企業の経営者が、

このような手口をどうやって

考え出したのでしょうか?

 

答えは簡単で、

「助成金コンサルタント」

などと名乗る怪しげな人たちが、

指南しているのです。

 

本職は社会保険労務士など、

労働法関連の法規に通じた専門家です。

 

このような人たちにとっては、

制度を悪用して助成金を不正取得する

方法を思いつくのは簡単です。

 

簡単だといっても、

大部分の社労士の方は

そのようなモラルが低いことを指導しません。

 

しかし、実際に国から

膨大な助成金を詐取し、

逮捕された社会保険労務士が出ています。

詐欺社労士 逮捕
なんと億単位の詐欺

休業助成金以外にも、あらゆる助成金を詐取して、

なんと総額1億近くを詐取した凄腕です。

 

参考:雇用安定助成金不正受給 詐欺容疑立件

 

この社労士さんは、

いまだに名前を検索すると

犯罪歴が出てきてしまいます。

 

社労士として仕事をしていくのは、

かなり難しいのでは・・・と思います。

 

制度を悪用して不正にお金を得る、

小ずるい人はいくらでもいます。

 

しかし、度を超すと犯罪者として

汚名を残すことになります。