パートが健康保険組合に加入すると、企業は5,400億円損をする

1.パートが健康保険組合に加入すると、企業は5,400億円損をする

 

パートが健康保険組合に加入すると、

企業は5,400億円損をする。

 

パートで働いている人も、

健康保険や厚生年金に加入できるようにしよう、

という動きが広まっています。

社会保険料
健康保険料や年金保険料、取られるようになるんですか??

この加入範囲の拡大が実施された場合、

企業の負担増は5千億円を超えるとの試算を、

厚生労働省が2月13日に発表しています。

 

内訳は、

・健康保険で2,100億円

・厚生年金で3,300億円

です。

 

新たに加入する人の条件を

「週の労働時間が20時間以上」

「働く(予定の)期間6ヶ月以上」

で試算した場合に、

上記の5,400億円という金額が出てくるとのことです。

 

こうなると、企業が取る手段は

「パート社員の採用基準をきつくする」

だと思うのですが・・・

 

社員を一人雇うコストが上がるのですから、

その分、要求水準も上がりますからね。

社会保険扶養
パートへの要求水準がきつくなる?

あるいは、

週あたり労働時間や雇用期間を満たしていても、

これらの社会保険への加入義務がない

「学生アルバイト」

を重用するようになるかも知れません。

 

なんにせよ、

「規制すれば問題は全部解決する」

という発想でやっているような気がしてなりません。

 

「3年以上の派遣は禁止。正社員にすること」

と規制したら、

「2年11ヶ月でクビを切られる」

派遣社員が続出するようになった
のと同じ結末をたどる予感がします。

 

派遣の件は、

きつい規制を嫌った企業が

海外に工場を移転させるなどで対応しました

(円高の影響の方が大きいですが)。

 

しかし、

パート社員を多く戦力化している業界は

飲食店や販売店など、

内需のサービス業がメインです。

 

これらの業界が

パート社員の採用を渋るようになったら、

ますます景気が悪くなるのは

容易に想像がつきます。

 

この改革をすると、

国の負担が減って

企業やけんぽ協会などの負担が増えるようです。

 

「国の財政を改善する!」

→「よし、負担を外に押しつけよう!」

では何の解決にもならないと思うのは私だけでしょうか。

 

2.もうひとつの負担逃れ

もうひとつ会社がやりそうな、

「社会保険料の負担逃れルート」

があります。

 

それは、

「4~6月の期間、パートのシフトを削る」

です。

 

ご存じの方も多いと思いますが、

年金保険料や健康保険料など、

一連の社会保険料の金額は、

「毎年4~6月に稼いだ給与」

を基準に決められます。

 

つまり、

この期間の給与を低く抑えれば、

社会保険料の負担も低くなります。


社会保険料負担が、

4~6月の給与が基準になる点について、

詳しくは別項目

そろそろ気をつけたいこと

をご参照ください。


 

負担減を目的に、

パート社員の出社頻度を落とす、

というのは、

完全に本末転倒です。

 

しかし、

現場の事情などお構いなし、

机上での計算で経営方針を決める、

といった経営者だと、

本当にやりかねません。

 

現場の視点から見れば

ムチャクチャなことでも、

経営者が

「紙の上では」

改善になるからといって、

ごり押ししている施策は多いものです。

 

4~6月、社会保険料の負担逃れが目的で

パート社員の労働時間を減らすと・・・

しわ寄せが来るのは正社員ですね。

 

今までも、

「12月になると来なくなる」

というパート社員がいました。

 

これは、扶養に入れなくなることを嫌がる

パート社員が、

103万、130万といった年収を境に、

ぱったりと会社に来なくなる、

という現象です。

 

これも正社員にしわ寄せが来ていました。

超時間労働
パート社員の助けがないので、こんな時間まで仕事

同じような現象が、

4~6月にも起きるようになるかも知れないのです。

 

どうも、あまり良い見通しは立ちませんね。