内定取り消しは受け入れるしかない? 失業保険.comメルマガ

■第107回 内定取り消しは受け入れるしかない?

 

アメリカの「サブプライム問題」以降、

景気悪化のニュースを

目にすることが極端に増えています。

 

アメリカの景気が失速すると、

道連れで不景気になるのが日本です。

 

日本の経済にも

様々な悪影響が出てきていますが、

そのひとつとして

企業が人員の採用を絞り始めました。

 

一例として、

来春就職予定の大学生の内定取り消しが

頻繁に起こり始めています。

 

内定取り消しなんて・・・
内定取り消しなんて・・・

 

昨年まで「売り手市場」といわれていたのが

嘘のような悲惨な状況です。

 

転職市場も同様で、

今後いつ「内定取り消し」

が自分の身に降りかかってきても

不思議ではありません。

 

「転職先を決めてから

退職届を出したので大丈夫」

と安心していて内定が取り消されたら、

泣くに泣けません。

さて、この「内定取り消し」、

企業側からもちかけられたら、

おとなしく受け入れる以外に

方法はないのでしょうか?

 

実は、

「内定取り消し」

は理屈の上では可能です。

 

しかし、だからと言って

会社が好き勝手に取り消せる、

という訳ではありません。

 

今回は、

「経営状態の悪化」

を理由とした内定取り消しに

絞ってお話しますが、

この場合、

次のような条件を満たす必要があります。

 

・経営悪化が新規採用を

不可能ないし困難とするようなものである

 

・経営悪化が内定当時、

予測できないものであった

内定取り消しは、企業にとっても苦渋の選択
内定取り消しは、企業にとっても苦渋の選択

最近起きている内定取り消しが

これを満たしているかどうかは、

企業ごとに個別判断するしかありません。

 

しかし、少なくとも企業側に

「自由な判断で内定を取り消せる」

というほどの権限はない、

ということがお分かりいただけるかと思います。


関連記事:

履歴書に嘘を書いたら内定取り消しになるのか?

口約束の内定を信じると危険

経歴詐称は致命傷?


 

■ 編集後記

次回は、

転職する人からよくいただく質問について書きます。

 

「履歴書に嘘を書いて、

それがばれたら内定取り消しになるのか?」

です。

 

2.内定取り消し→倒産

「内定取り消し」

というと、血も涙もないイメージを

持つ方が多いかと思います。

 

確かに、

苦労して何通も履歴書を書き、

何回も面接を受け、

ようやく手にした内定。

 

それを、会社側からの都合で、

一方的に取り消しされるのですから、

「酷い会社だ!」

と憤りを感じるのも自然なことでしょう。

 

しかし、

内定取り消しにまで踏み込む企業は、

その時点で

ギリギリまで追い詰められていることが

少なくありません。

 

一例を挙げます。

 

リーマンショックによる経営悪化を受け、

新卒者の内定取り消しを行った企業が

ありました。

 

社名を「カナサシ重工」。

今はもうない会社です。

 

静岡に本社をおく造船会社でした。

早い話が、倒産してしまったのです。

 

カナサシ重工 倒産
カナサシ重工は倒産してしまいました

 

このカナサシ重工、

新卒内定式の前日に、

急遽内定を取り消し、

世間から大きな非難を

受けることになりました。

 

その後、資金繰りが改善したカナサシ重工。

 

一転、内定取り消しを取り消します。

(ああ、ややこしい)

 

企業存続に希望が見いだせたことで、

やっぱり新卒社員を採っておこう、

と判断したのですね。

 

しかし、経営環境はさらに悪化。

 

結局、倒産に至りました。

 

会社が消滅したのですから、

取り消されたことを取り消された内定は、

再度、取り消されることになりました。

 

まさに二転三転ですが、

結局、内定をもらっていた学生は、

仕事を得られずに

社会に放り出されるという

最悪の結末となったのです。

 

これが、内定から

さほど時間が経っていなければ

学生たちも他の企業を探すことが

できたはずです。

 

しかも最初の内定取り消しが

「入社式1日前」

というムチャクチャなタイミングですから、

当然、学生はみんな卒業済みでした。

 

日本の就職市場の不思議な点なのですが、

いったん卒業してしまうと、

就職できる企業のランクがガクンと落ちます。

 

このため、

単位を全部取り終わっているにも関わらず、

就職活動のためにわざと留年する学生まで

いるほどです。

(そのような制度を設けている大学があります)

 

新卒の就職市場にある、この新卒至上主義の

善し悪しはともかく、学生たちは

カナサシ重工側の都合によって

貴重な新卒カードを失ってしまったことは

間違い有りません。

 

何が恐ろしいかというと、

このような「交通事故」にあったとしか

思えない被害を受けた学生に対しても、

他の企業の採用担当者は

 

「企業のリスク判断ができなかったのは

君の責任だ」

などと言い放つことです。

 

何なんでしょうか、

学生に対するこの要求の高さは。