口約束の内定を信じると危険

1.口約束の内定を信じると危険

忙しい日々の業務の合間をぬって

苦労して転職活動を行い、

そのかいあってめでたく転職先が内定・・・

 

「来月から出社なので、

早く今の会社に辞表を提出しないといけない」

 

ちょっと待って下さい。

 

転職先が決まったことは

めでたいことです。

 

しかし、その内定は、

本当に法的に守る義務がある

内定になっているでしょうか?

契約内容を確認しないと、落とし穴が
契約内容を確認しないと、落とし穴が

転職先の企業から電話で

「内定です」という連絡をもらったとしても、

その段階では口約束にしか過ぎないのです。

 

もし、その内定が口約束だけの場合、

まだ辞表を出してはいけません。

 

辞表を出すのは、

「転職先の会社が、正式に採用するという

意思表示をした証拠が手元に届いてから」です。

 

具体的には、雇入通知書や

採用決定知書が届いた後です。

 

この雇入通知書や採用決定知書とは、

採用月日、賃金、労働時間など、

主な労働条件を記載した書類で、

採用にあたっては必ず労働者への交付が

義務づけられているものです。

 

転職先の採用責任者から交付されます。

 

この書類を発行した後は、

会社の方もそう簡単に

「事情により、採用できなくなりました」

と言い出すことはできなくなります。

 

会社に辞表を出した後で、

手のひらを返されたという事例は

数多くあります。

 

突然、電話で

「当社の採用計画で、

大幅な縮小方針が決定しました。

 

つきましては、

今回の話はなかったことにしてください」

 

などと言われてしまうのです。

 

普段はメールなどを

主にやりとりに使っていたのに、

こういうときだけは

電話してくることが多いです。

内定取り消しを電話で知らされる
内定取り消しを電話で知らされる

というのは、メールだと証拠が残りますが、

電話は証拠が残らないからです。

 

転職する予定の会社から電話がかかってきて、

「内定取り消しの電話かも知れないから、

会話を録音しておこう」

などと考える人はまずいません。

 

仮に内定取り消しを受けた場合であっても、

雇入通知書が手元にあれば

まだ対抗する手段があります。

 

くれぐれも、口約束に踊らされて

取り返しがつかない事態に

陥らないようにしましょう。


関連記事:

労働条件は必ず確認

入社は「契約」


 

2.Q&A

 

Q.内定と内々定の違いは何でしょうか?

 

先日、内々定をいただきましたが、

「内定は制限があって、まだ出せない。

現時点では内々定で」

と言われています。

 

この場合、内定に至らず、

取り消しにされてしまうのでは?

と不安です。

 

他の企業への就職活動を

辞めるように言われましたが、

従って良いものでしょうか?

内定と内々定の違いは
内定と内々定の違いは?学生には分かりにくいです

A.転職では滅多に見かけませんが、

新卒での就職では「内々定」

というフレーズがよく登場します。

 

内々定というのは、

早い話が「内定を出す」

という約束です。

 

新卒の内定は、

経団連のとりきめによって

10月1日以降にならないと

出すことができません。

 

しかし、

そこまで学生をひっぱると、

どんどん他の企業に

逃げられてしまいます。

 

そこで出てきた概念が、

内々定です。

 

実質的に内定なのですが、

制約があってまだ内定を出せない。

 

だから内々定という形で・・・

という理解でよいでしょう。

 

さて、この内々定ですが、

内定との違いはやはり存在します。

 

最も大きなポイントは、

「取り消しても、会社にペナルティがない」

という点でしょう。

 

内定というのは、法律的に言えば

「始期付解約権留保付労働契約」

に該当します。

 

何やら難しい単語が出てきましたが、

概念としては、特に難しくはありません。

 

要は、

○月○日から○○という企業で

働くことが契約として成立した、

という状態だと思えば間違っていません。

 

これに対し、内々定の段階では、

この契約が成り立っていません。

 

契約が成り立っていない以上、

内々定が取り消しになっても、

法律上、会社を罰することはできません。

 

というと、不安しか感じないと思いますが、

内々定取り消し、というのは、

それこそ滅多なことでは起きません。

 

何らかの事件で、業績が極端に悪化した、

といった事情がない限り、起こりえないのです。

 

リーマンショックの影響を受けて

内定を取り消した

造船関係の会社がありましたが、

ここは、翌年に倒産しました。

 

当時は

「会社のやり方が酷すぎる」

という論調でニュースになりましたが、

結局倒産してしまったのですから、

正しい判断だったわけです。

 

そのまま入社していたら、

新卒者が入社数ヶ月で

路頭に迷っていたのですから。

 

少し話しがそれました。

 

ご質問に対する回答をまとめると、

下記のようになります。

 

(1)内々定というのは、

10月1日以降にしか

内定を出せない制限があるため、

それ以前に

「内定を出す約束をする」

こと。

 

(2)内々定取り消しは、

内定よりはあり得る。

 

しかし、

突発的、かつ極端な業績悪化でもない限り、

心配する必要はない。