1.失業保険をもらいながらアルバイトをする裏技・・・そんなの裏技でも何でもない!
退職後、ハローワークで失業保険をもらう手続きも完了。
後は、再就職活動に専念するだけ・・・
といいたいところですが、そう簡単に納得のいく再就職先が見つかれば誰も苦労しません。
有効求人倍率は上昇していますが、それはあくまでアルバイトや契約社員などの非正規雇用を含めた数値で、正社員になるのは相変わらず狭き門だからです。
特に自己都合退職した人の場合、最初の失業保険が出るのが4ヶ月後と、かなり先になります(懲戒解雇の人も同様です)。
3ヶ月間も無収入の状態で過ごすのは、多くの人にとってはかなりの精神的苦痛を伴います。
お金が出ていく一方だと、経験したことがないようなスピードで貯金は目減りしていきます。
いや、当面の生活費になる貯金があればまだマシな方で、今月の家賃をどうしようか?思案に暮れる人も多いはずです。
ということで、かなりの割合の人が失業中にアルバイトを経験しています。
そして、ほとんどの人がハローワークにそれを黙っています。
なぜかというと、アルバイト禁止と思い込んでいるからです。
実は、3ヶ月の受給制限期間だろうが失業保険の支給が始まっていようが、アルバイトをすることは禁止されていません。
ただし、ハローワークで手続きをしてからの7日間だけ、アルバイトすら禁止されている期間が存在します。
詳しくは、過去の記事
をご覧ください。
単に、「働いた日と労働時間を報告する義務」「その日に得た報酬額を報告する義務」があるだけです。
手元に「失業認定報告書」がある方は確認されてみてください。
働いた日に○をつける欄があるはずです。
つまり、申請さえすればアルバイトはOK。
失業保険の情報サイトでは、「失業保険受給中にアルバイトをする裏技!」などと派手に書いてあるところもありますが、こんなのは裏技とはいえません。
初回の受給説明会で、ハローワークの職員が説明することだからです。
なお、アルバイトをした日の失業保険は、もらえないか、減額して支給になります。
稼いだ額が少ない場合は減額、多い場合は不支給です。
不支給の場合は、失業保険の受給残日数は減りませんので、後に回るだけです。
(ただし、退職から1年以内という、失業保険の受給期間には注意が必要です)
減額されて支給された場合は、失業保険の受給残日数は減らされてしまいます。
これははっきりいって損ですので、アルバイトをする日は長時間働くようにして、可能な限り稼ぎましょう。
2.給付制限期間中のアルバイト
前回は、失業保険をもらっている期間でも、アルバイトは可能であることを確認しました。
アルバイトをして収入を得た場合、原則的に失業保険の受給日数は減らず、単に支給が後回しになるだけでした。
(得た報酬が少ない場合は、減額された上で失業保険が支給されますが、受給残日数も減らされてしまいます)
この場合、ハローワークに働いた日時と得た報酬を報告することで、堂々とアルバイトできます。
ここで困るのが、3ヶ月間の受給制限がかかっている人です。
しばらくは失業認定日も来ませんので、ハローワークに失業認定報告書を提出する機会もありません。
つまり、働いてアルバイト報酬を得たことを申告する機会がないのです。
この場合、どのように行動すれば、あとあと不具合が起きないのでしょうか。
これは単純に、「ハローワークに報告する必要はない」というのが回答です。
失業認定報告書に働いた日時と得た報酬を記入するのは、失業保険の支給有無や支給額の調整のためです。
しかし、受給制限期間中は、失業保険をもらえませんので、影響を受けないのです。
では、受給制限期間中の3ヶ月間はアルバイトし放題かというと、あまりのめり込み過ぎると危険です。
なぜかというと、労働時間が長くなり過ぎると、雇用保険への加入義務が発生するからです。
雇用保険に加入させられたら、その時点で再就職したと見なされます。
つまり、失業保険をもらう資格そのものが消滅してしまうのです。
雇用保険への加入義務が生じるのは、週20時間以上の労働時間と、31日以上雇用見込みの両方を満たした場合です。
また、2週間以上継続して働いた場合も、再就職扱いとされてしまうことがあります。
受給制限期間中とはいえ、アルバイトは単発か週単位の短期アルバイトにとどめておくのが無難といえるでしょう。
3.失業保険をもらっている期間のアルバイト
失業保険受給中にアルバイトをした場合は、その日の失業保険はもらえません。
といっても、失業保険の支給日数も減りませんから、単に先送りになるだけです。
原則はそうなっているのですが、短時間労働の場合は、失業保険をもらえる場合があります。
この短時間労働は、ハローワークでは内職・手伝いと言われています。
具体的には、1日4時間未満の労働時間で働くことです。
言葉のイメージからすると、家で何かした場合だけを指すように思えますが、外に出てアルバイトをした場合であっても該当します。
内職・手伝いの場合、得た報酬によって失業保険の支給パターンが3つに分かれます。
下記で、具体的に見てみましょう。
まず、基準額を算出します。
●失業保険の日額+(その日に内職・手伝いで得た報酬額-1,289円)
1.上記の額が、賃金日額の80%以下の場合=減額なし
2.上記の額が、賃金日額の80%を超える場合=超えた金額を失業保険から差し引いて支給
3.上記の額が、失業保険の日額以上の場合=全額不支給
簡単にまとめると、「その日に内職・手伝いで得た合計収入額が賃金日額の80%以内の範囲なら、失業保険は満額受給可能になる」という理解でよいでしょう。
なお、上記には1,289円(毎年8月1日に見直し)の控除額もあるので、それを差し引いた額が1.の範囲内であれば、失業保険の減額はありません。
中途半端な金額を支給されて、失業保険の受給残日数が減るのが一番痛いですから、内職・手伝いはできれば避けた方が無難です。
以前にも書きましたが、アルバイトをする日は稼げるだけ稼ぐのが総収入という点で見れば有利です。
毎日、少しづつ働くというのが最も損をするパターンです。
4.病気やケガの場合
重病や大きなケガが理由で退職した場合、働ける状態に回復するまでは失業保険の受給手続きをすることができません。
失業保険は、「働き口さえあれば、明日からでも働く能力がある」人にしか支給されないからです。
しかし、求職者登録をした後に病気やケガに見舞われてしまった場合はどうなるのでしょうか?
上に書いた理屈でいえば、「働ける状態に回復するまで、失業保険の支給は停止される」となりそうです。
しかし、それはあまりに酷だということで、救済措置が設けられています。
それが、傷病手当です。
傷病手当が支給されるのは、「求職者登録が済んだ後に、病気やケガで15日以上働くことができなくなった人」です。
つまり、全治2週間以内のケガなどは対象外ですね。
もらえる傷病手当は、失業保険と同額です。
つまり、失業保険という給付金はもらえない状態になっても、傷病手当という別名目で同額の給付金が出るのです。
支給日数も失業保険と同様です。
つまり、失業保険の残り日数と同じ日数が、傷病手当をもらうことができる上限です。
あまり違いがないように思えるかも知れませんが、大きく影響するのが訓練延長給付(職業訓練校に行っている場合)などの延長給付を受給中の場合です。
この場合、傷病手当の支給対象外となりますので要注意です。
また、下記の条件に該当する日も傷病手当の支給対象とはなりません。
1.待期期間中(7日間)
2.給付制限期間中(3ヶ月)
3.産前6週間、産後8週間
4.会社からの休業補償(労働基準法)を受給した
5.休業補償給付(労災保険法)を受給した
6.健康保険法上の傷病手当金を受給した
特に最後6.の健康保険法上の傷病手当金は名前がほぼ同じということもあり混同しやすいので注意してください。
申請手続きですが、病気後、あるいはケガをした後に最初に失業認定日が来る前に、ハローワークで認定を受けます。
必要書類は、「傷病手当支給申請書」と「受給資格者証」です。
5.まとめ
・失業保険をもらっている期間にアルバイトをするのは禁止されていない。報告せずに働くと不正受給になるだけ。
・3ヶ月失業保険がもらえない、いわゆる給付制限期間中はアルバイトは自由。しかし、労働時間が週20時間を超えるなど、雇用保険に加入する条件を満たしてしまうと再就職扱いになり、失業保険をもらう資格を失うので注意する
・アルバイトをして得た金額が一定額以上の場合、その日の失業保険はもらえないが、受給日数も減らない。アルバイトで得た報酬が少ない場合は失業保険をもらえるが、減額される上に失業保険の受給日数も減るので、できれば避けたい。
・大まかに言うと、働く日は長時間集中的に働き、働かない日は働かない、という方針がよい。毎日短時間アルバイトする、という選択が一番損する可能性が高い
・失業保険をもらっている最中に病気やケガなどに15日以上なった場合、傷病手当という同額の給付金をもらうことが可能。