■第69回 失脚のメカニズム
あなたの会社に、
「絶大な権力を持っていたのに、
ある日突然降格になった」
というような人はいないでしょうか?
会社に限りませんが、
組織での失脚には
決まりきったパターンがあります。
1.権力者が、何らかの悪さをする
2.社長など、上層部からの心象が悪くなる
3.権力者の「過去の悪行」に対する情報が
次々に明らかになる
4.上層部の心象が最悪になり、
降格などの処分を受ける。
ここで注目していただきたいのは、
3.の部分です。
権力者が調子に乗っているときには、
「あの人は陰でこんなに悪いことを
しているんですよ」
という情報は表には出てきません。
言いにくいのはもちろんですが、
言ったとしても権力者が元気であれば
もみ消してしまうことが多いからです。
下手すると、
告発したほうが
会社を辞めるはめになります。
私が勤めていた会社でも、
「会社の権力者を告発した」
せいで、
「適当な理由をつけて降格」
「3年前のことをほじくり返して
始末書を書かせる」
といったイジメを数ヶ月に渡って受け続け、
退職に追い込まれた人がいました。
このように、
権力者が元気なときに戦いをしかけても
逆襲されることが多くなります。
結果として、権力者が行っている
「悪行三昧」
は、そのさらに上の人間の
耳に入ることはありません。
会社の上層部は、
問題がよほど大きくならない限り、
社員の素行といった細かいことには
関わることがないからです。
しかし、権力者が何かしら大きなヘマをする、
あるいは甚大なトラブルを起こし、
上層部からの心象が悪くなった瞬間・・・
そのタイミングで、
「今まで言えなかった過去の悪行三昧」
が次々にリークされてくることになります。
権力者をそのまま失脚に追い込み、
報復する力すら奪おうと仕掛けてくるのです。
好き勝手に振舞っていれば、
あちこちで恨みを買っていることが
多いですから、
こういうことはよく起こります。
「今まで言えなかったことを、
この機会にガンガン言ってやれ」
ということですね。
悪い話は「短期間に」「大量に」
出てくることが多いですが、
その背景にはこのような事情があります。
しかも、いったん
連続で悪事が明るみに出始めると、
さらに悪事の暴露が連続して起こります。
どんどん告発が起きている今のうちに、
どさくさ紛れに自分が持っているネタも
リークしてやれ、
という訳です。
実際、あまりに一度に告発されると、
告発された権力者も
誰がやったのか?
などをいちいち調査していられません。
さて、この法則を実際の会社生活に
あてはめてみます。
会社に嫌な上司がいる、という場合・・・
その上司に恨みを持っている同僚が
大勢いるかどうか、
ちょっと探りを入れてみましょう。
あちこちから恨みを買っている場合、
たったひとつのヘマをしただけで
次々と追い討ちをかけられることになります。
そのまま失脚してしまうことも十分期待できるでしょう。
退職マニュアルを販売している私がいうのも
どうかと思うのですが、
そのような上司が嫌いで会社を辞める、
というのは実はもったいない話です。
相手を追い出せないかどうか、
まず考えてみましょう。
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■ 編集後記
今回の、
「悪い話は、短期間に大量に出てくる」
という法則は、
社内だけで起こるものではありません。
食品関係で賞味期限や産地の偽装が
問題になっていますが、
これも似たようなメカニズムです。
「偽装を告発すれば
会社に調査が入るかも知れない」
「調査が入れば、
もみ消すことなんかできないだろう」
と思う人が増えたから、
偽装が内部告発によって
次々に明らかになっている・・・
のではないでしょうか。
実際、今年の農水省の
食品表示110番
への告発件数は過去最高を更新。
特にミートホープ社の事件以降、
前年比3倍のペースで推移しています。