■ 第81回 宙に浮く退職金
今日は退職金のお話です。
退職金は、
社員が辞めたら会社の通帳から支払う・・・
というわけではありません。
社員の退職に備えて、
会社が積み立てています。
中小企業の場合、
中退共という独立行政法人に
積み立てていることがほとんどです。
ここに積み立てておいたお金が、
退職金になります。
なぜわざわざ外部に積み立てるかというと、
経費になるからというのが大きいです。
後は、一部国から補助金も出ます。
退職後は、この中退共から書類が届きます。
それに振込先口座なんかを記入して送り返して、
やっと退職金が振り込まれます。
(積み立て分以上出る場合は、
差額は会社から振り込まれます)
しかし、
「自分の年金が中退共から振り込まれる」
ということを理解している人は多くありません。
結果、退職後に届いた郵便物を、
開封もせずに放置している人も多くいます。
知らないところから届いた郵便物なんて、
その場で開封しなければ
忘れてしまうことも多いでしょう。
自分の退職金がいくらか知っていれば
おかしいと気づくのでしょうが、
辞めてからも自分の退職金がいくらか知らない
という話もよく聞きます。
そんな人が、もらえるはずの退職金を
もらわないまま過ごしています。
年金も宙に浮いていますが、
退職金も宙に浮いているのです。
「まさか、そんなことないでしょう」
と思われる方へ。
2007年10月。
中退共は今までに366億円の退職金が
時効になっていることを発表しました。
このお金、どこに流れたんでしょうか?
まあ、これは年金問題とは違って、
受け取り側にも責任があるのですが・・・
問い合わせもできますので、
「もらってないかも知れない」
という方は
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/access/access00.html
までどうぞ。
関連記事:
■ 編集後記
退職金請求権は、
5年で時効にかかります。
2.Q&A
Q.今の会社を1ヶ月後に退職します。
しかし、おりからの人手不足から、
後任の社員がなかなか入社しません。
このままだと、
引き継ぎを満足にできないまま
退職することになりそうです。
それはそれで仕方ないか・・・
と思っていたら、上司から
「引き継ぎが終わらないまま辞めるのは、
会社への背信行為だ」
「このまま辞めたら、退職金を減額する」
と突然言い渡されました。
確かに引き継ぎは終わっていません。
終わっていませんが、
後任の社員が入社してこないので、
引き継ぎしようがない、
というのが正直なところです。
辞める人間は、
後任人事にまで
責任を持たなければならないのでしょうか?
どうしても納得がいかないのですが。
A.退職金の減額が可能か?
という主旨ですね。
退職金の減額そのものは、可能です。
しかし、それは
重い就業規則違反など、
退職者本人に重要な責任がある場合に
限られます。
例えば、
会社のお金を横領して、
懲戒解雇になった場合などが
これに該当します。
あとは、「引き継ぎを終わらせずに辞める」
ことがこの「重い就業規則違反」に該当するか?
が問題となります。
感覚的に分かることでしょうが、
退職金を減額する根拠にはなりません。
そもそも、
後任社員を募集・採用するのは会社の責任です。
「お前が辞めるんだから、お前が後任を紹介しろ」
とムチャクチャな要求をする企業が最近多いですが、
そこまで行かないにせよ、
同じ系統の理不尽要求であると言えるでしょう。
このような要求をする企業は意外と多いのですが、
法的な根拠は全くありません。
つまり、話が外に出たら、
困るのは会社の方です。
まったく恐れる必要はありませんし、
実際に減額されたとしても、
争う気力さえあれば
まずこちらの言い分が通ります。
会社は、
「どうせ刃向かってこない」
と思っているからこそ、
このようなムチャな要求をしてくるのです。