■ 第108回 履歴書に嘘を書いたら内定取り消しになるのか?
今回は、
「履歴書に嘘を書いて内定をもらった」
→「嘘がばれたら内定取り消しになるのか?」
についてです。
以前にも、
経歴詐称がばれたときの取り扱いについて
書いたことがあります。
そのときの結論は、
「職場秩序に
著しい不利益や混乱をもたらす」
場合に限り
解雇が認められるというものでした。
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では、経歴詐称がばれても
内定取り消しにならないのか・・・
というとそんなに甘くはありません。
すでに入社していれば、
社員としての立場は
厚く保護されます(法律上は)。
しかし、
内定が出ただけの状態だと、
そこまでの保護は及びません。
これは、「解雇」と「内定取消」の場合を比べて、
それが正当化される条件の厳しさを
見比べてみれば明らかです。
ですので、
「履歴書の嘘がばれて
内定を取り消された」
からといって
解雇予告手当のように、
何らかのお金がもらえる・・・
ということも期待できません。
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■ 編集後記
経歴詐称がばれてしまう典型的なルートは、
年金の加入記録です。
年金手帳を見れば
今まで加入してきた履歴が明らかですので、
ごまかしようがありません。
そこまでチェックする会社がどれだけあるか、
といわれると
中小企業では少数派であることは確かです。
もっと言うと、
人手不足状態の会社であれば
見てみぬふりをすることすらあります。
ですが、いざ
「この社員を辞めさせよう」
という話になった場合・・・
「経歴詐称」をほじくり返して
難癖をつけてきても何の不思議もありません。
人を辞めさせることに慣れている会社は、
こういう分野には
非常に実践的なノウハウを蓄積しています(笑)。
「入社した後なら、解雇になるのでは?」
「それなら、雇用は強く保護されるのでは?」
そう思われたあなたは、
今回書いたテーマについて
よく理解されています。
確かに、法律上はそれが正しいのです。
しかし、世の中の多くの企業は、
恐ろしいことに
労働基準法を守る気がありません。
「守りたい気はやまやまなのだが、
余裕がなく、現実的にできない」
といった「やむを得ず」
という感覚ですらないのです。
具体的には、
「解雇要件に該当しないのに解雇する」
とうことが横行しているのと同様、
言いがかりをつけて辞めるように仕向ける、
ということがあちこちで起きています。
そういう会社にとっては、
社員は
「とにかく使い放題で働かせる」
「心身がおかしくなったら、辞めてもらう」
というのが基本です。
このような形で辞めさせるのは、
外部に話を持っていけば
「不当解雇」
と判定される確率が極めて高いです。
しかし、会社を退職した多くの人は、
会社という組織に対して
そこまで戦う気力も余裕も
残されていないことがほとんどです。
こうして、
知られざるブラック企業の
やりたい放題は、
相も変わらず横行しているのが
実業なのです。
「そうはいっても、ブラック企業は
社会問題化していますよね?」
はい、その通りです。
2017年現在、
ブラック企業に対する風当たりは非常に
強くなってきましたが、
やり玉に挙げられるのは
ある程度の有名企業ばかりです。
これは当たり前の話で、
ニュースバリューがある会社での出来事が
優先して報道されるからです。
つまり、
世の中の会社の大部分を占める中小企業が
「ブラック企業」であっても、
部外者にはその事実すら伝わっていません。
外部の目にさらされる機会がない・・・
ということは、
ブラック体質を是正する機会もない、
ということを意味します。
ブラック企業がその体質を
自発的に是正する、というのは
亀に空を飛べというぐらい
難しいことなのです。
話を戻すと、
そういった企業にとっては、
人材は激しく入れ替えるのが当たり前の、
文字通りの「消耗品」でしかありません。
このため、
経歴詐称などのマイナス点は、
気づいていてもスルーします。
そして、利用価値がなくなったら、
突然、「経歴詐称をして入社した」
という点を突いてくるのです。
仕事に慣れて、
「この会社に骨をうずめよう」
とあなたが考え始めている頃・・・
上司は
「こいつも社内で
偉そうな顔するようになってきたな」
「いつ、辞めてもらおうか」
「入社時に嘘ついて入ってきているんだ、
いつでも辞めさせられるけどな」
と考え始めているかも知れないのです。
何にせよ、将来にわたって
リスクを抱えてしまうことは間違いないので、
経歴詐称などはしないに越したことはない、
という当たり前の結論になります。