恐るべきハードル 失業保険.comメルマガ

■ 第80回 恐るべきハードル

「あぶれ手当」

ってご存知でしょうか?

 

日雇い労働者向けの失業保険

と考えていただければOKです。

 

日雇い派遣で働いている人は、

あぶれ手当が適用されると、

仕事がない日に

いくばくかのお金をもらえることになります。

 

しかし。

 

このあぶれ手当、

「払う気など一切ない」

といわんばかりのハードルの高さなのです。

あぶれ手当
あぶれ手当、そもそも知らない・・・という人が多いです

まず、登録派遣業者が

日雇雇用保険に加入しなければなりません。

 

1月時点で加入している派遣会社は・・・

フルキャスト渋谷支店だけのようです。

 

東京でここだけ、ではありません。

 

全国でここだけです。

 

他の会社や、

他の支店で登録されている方は、

この時点で受給不可になります。

 

次に、「明日の仕事が見つからなかった」

という証明書を、

前日のうちに派遣会社から

受け取らなければなりません。

 

派遣会社の営業時間内に事務所に行けなければ、

この時点で受給不可になります。

 

三つ目。

 

この手当の受付時間は、

毎日午前8時半から9時までです。

 

つまり、わずか30分。

 

この時間以外は受け付けてもらえません。

 

他にも条件があるのですが、

もはや説明しなくてもいいでしょう。

 

とにかく、超えるべきハードルが

異常に高いことが

お分かりいただけるかと思います。

 

もう、

「払う気なんか元々ありませんよ」

といっているようにしか思えません。

誰だこんな制度にしたの
誰だこんな制度にしたの

こうした例を見れば分かりますが

「保険制度があるから大丈夫」

と考えるのは危険です。

 

実際の運用場面において、

あの手この手で逃げられることが多々あります。

 

■ 編集後記

この「あぶれ手当」

が日雇派遣労働者に適用されたのは、

2007年の9月でした。

 

日雇派遣労働者の過酷な勤務実態が

頻繁に報道されていた時期と重なります。

 

その後、・・・

 

第1号の受給者は、

いつ現れたと思いますか?

 

なんと、半年後です。

 

「世間がうるさいので

とりあえず適用することにしたけど、

使わせる気など毛頭ない」

と行政側が考えている・・・

というのは言いすぎでしょうか。


関連記事:

日雇い労働=保険なし・・・??

同じ日雇い、変わりはない?


 

2.あぶれ手当、もらっているのは犯罪者

このあぶれ手当、

本当に必要な人には行き渡っていません。

 

そもそも、制度を知らなかったりします。

 

一方、

制度の悪用に長けた悪人にとっては、

この手の給付金はたびたび

「金づる」

にされます。

 

2,014年に、大阪西成区で

大がかりなあぶれ手当の

詐取事件が起き、

逮捕者が出ました。

 

被害総額は、3年半で何と

1億1,500万円にも及びます。

 

巨額詐欺事件となったわけですが、

この詐欺グループは、

大阪あいりん地区で働く労働者500名

を抱き込み、

手当を不正に受給させていました。

詐欺師と日雇い労働者が協力
詐欺師と日雇い労働者が協力

あぶれ手当の受給資格を満たすよう、

詐欺グループは、

偽の求人票や架空の会社まで

用意していました。

 

いやはや・・・

 

日本の行政の大きな欠点は

「制度を作ったのだから、

利用しないのはしない奴が悪い」

という態度を一貫して

とり続けていることです。

 

このような姿勢をとり続ける限り、

本当に制度の利用が必要な人は、

その制度の存在にすら気付きません。

 

実際に利用する人数は、

さらに輪を掛けて少数です。

 

一方、

このような制度にめざとい詐欺師は、

何も知らない労働者を抱き込み、

うまく言いくるめ、

国から莫大な給付金を詐取しています。

 

この詐欺事件に荷担した日雇い労働者は

500名にも及びますが、

そもそも、詐欺に荷担した、

という認識がある人は

少数派ではないでしょうか。

 

多くの人は、

よく分からないまま、

「まあ、少し小遣いが入る話ならいいか」

という程度の理解で手を貸したと思われます。

 

この件については、

その500名の労働者が、

どこにいるのか

その所在すらつかめていないため、

実態は不明なままです。