■第57回 日雇い労働=保険なし・・・??
まず質問です。
「日雇い」で働いている場合、
年金や健康保険には、
自分で加入しなくてはならない
のでしょうか?
基本的にはそうなのですが、
これには例外があります。
例え日雇いであっても、
「1ヶ月単位で見て」
「正社員の75%以上の時間働いていたら」
会社はその労働者を
社会保険に加入させる義務があります。
先日、某ホテルがこの件に関して指導を受けました。
このホテルでは、
日雇い労働者140人中、
50人が正社員と同等の勤務時間で
労働していました。
しかし、ホテル側はこの50人を
社会保険に加入させていませんでした。
勤務状況を把握していなかった
のが原因のようです。
勤務状況をホテル側が把握していた14人は、
社会保険に加入していました。
これを見る限り、搾取してやろう・・・
という悪意はなかったようですが、
気づかなければ
労働者が不利な状況のままだったことには
変わりありません。
このように、
例え日雇い労働という契約であっても、
常勤しているも同然の場合は
各種保険に加入することができます。
今回のホテルの件は
人事管理上のミスだと思いますが、
中には社員の保険料を払うのが惜しいがために
このような真似をする経営者もいます。
契約形態だけをいじって、
会社が保険料を負担しないようにするのです。
「君は日雇いだから、保険とかは自分で加入して!」
というわけです。
ですが、そのようなことは
一歩会社の外に出ると通らない理屈なのです。
読者の方で
「日雇いの契約だが、
正社員と同じように働いている」
という方がいらっしゃいましたら、
保険に加入しているかどうか
確認してみることをお勧めいたします。
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■編集後記
今回の件に似たケースで、
「請負契約」
にしてしまうパターンがあります。
「請負契約」と「雇用契約」は違いますから、
労働者を保険に加入させる必要はありません。
ですが、「請負契約」なら、
仕事の結果以外には
何の指図も受けることはありません。
いつ仕事をしようが、
【納期までに依頼された仕事を完了】
すれば、それでいいのです。
ところが、実際にはそうなっていない
「請負契約」が世の中には溢れています。
これは請負契約のほうが、
企業側の責任がずっと軽くなるからです。
そこに目をつけた企業が、
せっせと「偽装請負」を始めたわけです。
典型的な例が、
ある牛丼チェーン店を運営する企業です。
この企業では、アルバイトを
「請負契約」
であると主張していました。
理由は簡単で、
請負契約の場合、
残業代を支払わなくてよいからです。
そもそも、請負契約には
労働時間に対してお金を払う、
という概念がありません。
そこで、
「請負契約にしてしまえば、
いくら残業させても、
残業代を払う必要はない」
という謎理論を展開したのが
この牛丼チェーン店です。
結果として、
「1人の人間で店舗を回せば、
その分会社の利益になる」
とばかりに、
とても一人ではこなせない仕事量を
負担させられるアルバイトが続出。
しかも、人がいないので
そのようなムチャな「ワンオペ」を
1日18時間強いられていたような
ケースも続出しました。
請負契約というのは、
仕事の成果物に対して
報酬を支払う形態の契約なので、
店舗のオペレーションには
適用できない可能性が高いです。
結論としては、
裁判所は牛丼チェーン店側の主張を
すべて退け、
アルバイトに残業代を支払うように
命じました。
このワンオペ牛丼チェーン店では
その後オペレーションの改善が
されたそうですが、
これは氷山の一角に過ぎません。
全国区で有名な企業だから
大騒ぎになり、
頻繁に報道されただけの話で、
世の中にはこのような体質の企業は
いまだに蔓延しています。
モラルの低い企業は、
このように何か有利な契約形態があると、
その「おいしいところだけ」
を吸おうとしてくるのです。
まったくもって、
油断できない世の中になってしまいました。