１．有給が残るときは買い取りを頼もう
退職にあたっての有休消化、3回目です。
前回は、
「引き継ぎが長引いて有給が消化できない場合でも
有給を放棄する義務はない」
「遠慮なく退職日の延長を要求しよう」
ということをお話ししました。
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では、どうしても退職日を延ばせない場合。
もうあきらめて
有給休暇を放棄するしかないのでしょうか？
実際にこの状況におかれると、
おとなしく有給休暇を放棄する人が多いです。
しかし、これからしばらく収入が
失業保険だけになるのに、
放棄するのはもったいなさすぎます。
この場合、対処方としては
「会社に有給買い取りを要求する」
という手があります。
つまり、有給を放棄するのではなく、
使わない分の有給休暇を
会社に買い取ってもらうのです。
本来、有給休暇の買い取りは禁止されているのですが、
退職するときだけは認められています
（理屈は今回重要でないので省略）。
これなら、日程の調整がつかない場合でも
損せずに引き継ぎをきっちり終えることが可能になります。
ただ、この有給買い取りには弱点があります。
会社には有給買い取りを受ける義務はなく、
あくまで任意です。
つまり、会社が「有給なんか買い取らないよ」
と言い出せば強制できません。
そんな場合は、
遠慮なく有給消化に入ってしまいましょう。
こういうことをすると何故か「懲戒解雇にするぞ」
と脅してくる会社がありますが、全く理屈は通っていません。
２．Ｑ＆Ａ
Ｑ．退職するときに、
有給休暇の買取を
会社に要求できることは理解できました。
ところで、
辞めない場合でも、
会社に有給休暇の買取を
要求することはできないのでしょうか？
私が勤めている会社は
最少人数で業務を回しているため、
有給休暇を取ることができません。
このため、
有給休暇は毎年消えている状況です。
とてももったいないのですが、
買い取ってはもらえないのでしょうか？
法律上では買取してもらう権利はないようですが、
会社が承諾したら大丈夫でしょうか？
また、有給休暇を買い取ってもらった場合、
もらえる金額は日給と同等ですか？
日給で計算すると1万円の場合でも、
有給買取になると5千円などにされないか不安です。
Ａ．残念ですが、有給の買取は不可能です。
有給休暇の買取が合法なのは、
あくまで退職時のみです。
なぜかというと、
有給休暇は本来、
「休むこと」
「心身の疲労を回復させること」
「リフレッシュして再び業務に励むこと」
に主旨が置かれているからです。
つまり、
「休まないから、代わりに給料をください」
というわけにはいかないのです。
退職時にのみ
有給休暇の買取が認められている理由は、
「心身の疲労を回復させて、業務に励む」
の「業務に励む」部分がないからです。
辞めてしまうわけですから、
もう業務に復帰することはありません。
退職時以外で有給休暇買取を行うと、
有給休暇の根本的な目的からそれます。
このため、通常時は認められていないのです。
では、認められていなくても
会社が承諾すればよいのでしょうか？
残念ながら、これも禁止されています。
法律で禁じられていますので、
会社が独自のルールを作っても
「買取可能」に変更することはできません。
そんなことをすれば、
労働基準法違反になってしまいます。
唯一の例外としては、
「すでに消滅してしまった有給休暇について
金銭対価を支払う」
ことがあげられます。
有給休暇は2年で時効にかかり消滅します。
消滅した有給休暇を買い取ることは、
「有給休暇の主旨に反しない」
（消滅している以上、もう休めないため）
ので、認められています。
ただ、このような措置をしてくれる会社が
どれほどあるのかというと、極めて少数です。
正直、期待できません。
なお、ご質問の最後にあった、
有給買取の場合の単価について
お答えしておきます。
これも、退職時のみの適用だとご理解ください。
（あるいは、例外的に時効で消滅した有給休暇）
有給の買取価格は、
基本的に日給と同額です。