■ 第35回 起業したとたんに損害賠償?
前回は、競業禁止についてお話しました。
前回記事:
「独立して、
すぐに同じ業界で仕事をしたら
懲戒にするぞ」
会社は、こんな内容の就業規則を作って
社員の独立を邪魔してきます。
ただ、これでは、
「自分の経験がない分野で独立しろ」
と言われたも同然です。
さすがに理不尽に感じる人が多いのか、
結構裁判までもつれこんでいます。
おかげで、
競業禁止にあたる範囲・あたらない範囲は
かなり明確になってきています。
どこまでやったら、
競業禁止規程に
違反したことになるのでしょうか?
まず、
「在職中に独立準備」
を始めていることが必要です。
これは、
「会社から給料をもらいながら」
「会社の利益にまったく貢献しない」
行為なので、
会社に対して
不利益をもたらしているといえるからです。
ただ、これだけでは
競業禁止規定違反にはなりません。
他に、
「会社に対する背信行為」
があることが必要になります。
具体的には、下記のような行為です。
「社員をごっそり引き抜く」
「取引先を持って行く」
「勤務先の営業機密を使って業務を行う」
これらの行動をするとさすがに、
背信行為と認定されることが多くなります。
社員を引き抜くときに
「この会社は潰れるぞ」
取引先を持って行くときに
「あの会社はぼったくっているんですよ」
などと、誹謗中傷を並べ立て、
社員や取引先を
自分の会社に誘導しようとしたら完全にアウトです。
独立しようと考えている人は、
どこまでやってもいいのか調べておきましょう。
「古巣とはいえ、独立した以上は敵だ!」
「取引先を取られる方が悪いんだ!」
「ビジネスの世界は弱肉強食だ!」
独立してやっていこう、
と考えるくらいですから、
こんな風に、鼻息が荒い人が多いですが、
このような態度は
致命傷になりかねません。
起業したとたんに損害賠償請求をされては、
あっという間に潰れてしまいます。
そもそも、
この程度のリスク管理ができない人が
独立する、
というのは自分から
地雷原に飛び込んでいくようなものです。
しかし、リスクを好んで取るような人ほど、
独立したがるのですね。
だからこそ、
独立した人のほとんどは短期間で行き詰まり、
サラリーマンに戻るわけです。
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■ 編集後記
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同じ業界で独立したのに、
以前の勤務先が全く文句を言ってこない・・・
そんな場合、
「あんなところ、すぐ潰れるから放っておけ」
と思われている可能性があります。
私が以前勤務していた会社を飛び出した人が、
そういう扱いを受けていました。
現実的には、
「うちの会社の利益が喰われるかもしれない・・・」
と思わなければ文句は言ってこないものです。
危険なのは、
取引先を持って行った場合、
社員をごっそり引き抜いた場合、
この2点でしょう。
このどちらかをやると、
前勤務先に大きなダメージが残りますから、
目の敵にされて、
場合によっては潰しにかかってきます。
以前の勤務先があれこれ言ってくるのは
怖いと思われている証拠ともいえます。
そう思えば、
損害賠償請求をされたとしても少しは気が
・・・やっぱり晴れませんね。