■第74回 足元を見るということ
昨年の12月19日、
厚生労働省はグッドウィルに
業務停止予告を行いました。
全800営業所で2ヶ月~4ヶ月という重いものです。
その後、同業大手のフルキャストが
すかさず派遣料金の値上げを発しました。
値上げ幅は5~8%です。
しかも年末発表で、
翌年1月から実施という急なものでした。
派遣会社を利用している会社も、
「そんなに値上げするならグッドウィルに頼むよ」
とはいえなくなりましたので、
受け入れざるを得ないようです。
「ライバル企業(グッドウィル)が死に体になった」
ことが、フルキャストを値上げに踏み切らせたことは
想像に難くありません。
派遣社員がいないと
成り立たなくなっている企業は多いですから、
企業の足元を見て値上げに踏み切ったといえます。
では、この値上げ分はどこにいくのでしょうか?
「今回の値上げは運営費用の高騰分を、
価格に転嫁したもの」
と説明されていますので派遣社員には入りません。
「長中期的には、スタッフに還元していきたい」
という意向は発表されていますが、
信じていいものでしょうか?
フルキャストは、
「業務管理費」を廃止しただけで、
「派遣社員への給与を1日250円アップした」
という発表を行ったという過去があります。
業務管理費=グッドウィルのデータ装備費
のようなもので、
派遣社員に渡るお金自体は1円も増えていません。
こういった企業姿勢からすると、
「スタッフに還元していく」
という発表も非常に怪しく思えてきます。
フルキャストでは
派遣社員の呼称は「キャスト」
というらしいですし・・・
派遣社員は「スタッフ」
じゃないから給料は上げない、
もあり得ます。
そもそも、派遣社員にしても
「待遇が悪いから、
グッドウィルで紹介された仕事の方に行く」
「フルキャストの仕事は断る」
とはいえなくなっています。
企業と同じで、
こちらも足元を見られているのが現状です。
今回のフルキャストの値上げは、
経営判断としては正しいのかも知れません。
しかし、
「企業と派遣社員の足元を見て、
会社だけが利益を伸ばそうとしている」
という印象を与えてしまっていることは
否定できません。
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■ 編集後記
フルキャスト自体も、
2007年には2回にわたって
業務停止命令を受けています。
最大手と2番手が業務停止を連発している業界
というのも珍しいですね。
「大手が業務停止を受けている」というより、
「業務停止を恐れずに利益を積み上げて言った会社が、
大手に成長した」
というのが正しいのかも知れません。
2.Q&A
Q.派遣社員で働いています。
時給は1,000円程度で、
アルバイト程度です。
業務内容が
特にスキルを要するようなものではないので
それは仕方ないと納得しています。
しかし、
派遣先企業の社員から、
「高い料金を払っているんだから」
という嫌味をよく言われます。
私自身は、
派遣先の企業が時給いくらの計算で
支払われているのか把握していません。
なので、
なんだか納得いかない気分がぬぐえません。
派遣会社の取り分、
悪い言い方をすると「ピンハネ率」ですが、
これを調べる方法はありますか?
A.派遣会社の取り分を調べる方法ですね。
これは簡単です。
「派遣元の会社に直接聞く」
以上です。
というのは、
派遣会社は、いくらを派遣社員に支払って、
いくらを会社が取っているのか、
開示する義務があるからです。
というと、
古くから派遣社員で働かれていた方は
驚かれます。
この「派遣会社の取り分」に関しては、
長い間秘密にされていたからです。
派遣会社が社員に開示することも
ありませんでしたし、
派遣先の会社が、
「君には1時間いくら支払っている」
と教えるのも固く口止めされてきたのです。
しかし、現在は派遣法の改正により、
こういった情報の公開は
派遣会社の義務となりました。
よって、派遣会社の方も、
「特に秘密にしておく理由がない」
ですから、
聞いたら教えてもらえる可能性が高いです。