第78回 退職は撤回できるのか?
いったん、会社に「辞めます」と伝えた後、
やっぱりもう少し続けよう・・・
という気持ちになる人がいます。
転職活動をしてみたら
想像以上に提示される条件が悪かった、
辞めたい原因だった嫌いな人が、
転勤で目の前からいなくなることに決まった
など、事情はそれぞれです。
そういった場合、
いったん出した「退職届(願)」
を撤回することはできるのでしょうか?
場合分けして考えてみましょう。
1.退職の意思を伝えただけの場合
これは、撤回できます。
会社から承諾の返事が来ていないので、
退職そのものが確定していないからです。
2.退職の意思を伝え、会社が承諾した場合
この場合、会社は退職の撤回を拒否できます。
すでに退職は確定事項になっているので、
それをあえて取り消すかどうか・・・
は会社の胸先三寸になってしまいます。
早い話が、「いや、辞めてよ」
と会社に言われたら辞めるしかありません。
退職の撤回を会社が認めるなら、
その人はまだまだ必要は人材だと推測できます。
一方、1.の場合でも何とかして
会社を去らせようとするなら、
そのまま勤務し続けても未来はありません。
法律的には1.の場合は「撤回しろ!」
と要求することができます。
ですが、残ったところで
劣悪な待遇に甘んじるハメになるのは
間違いありません。
そう考えると、退職の撤回は、
「会社の自分への評価」
がストレートに出てきます。
なかなか怖いですね。
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■ 編集後記
私も人の出入りが激しい会社に
勤務していましたが、
いったん「辞める」と言い出した社員は、
結局辞めます。
そのときは続けるという結論になっても、
何か不満を感じる度に
「辞める」ことが
真っ先に頭に浮かぶようになるようです。
こうなると、どの道長くありません。
また、人の出入りが激しい会社の偉い人は
そういうこともよく分かっています。
いったん「辞める」と言った社員は、
「いずれこいつは辞める」
というレッテルを貼られてしまうことが少なくありません。
ですので、私達労働者としては、
「辞める」というカードは
ギリギリまで残しておくほうが利口です。
2.Q&A
Q.生命保険の外交をしています。
厳しい仕事であることは重々承知の上で
転職したのですが、
あまりにも契約が取れず、
自信を喪失しています。
前職では営業としてそれなりの実績もあり、
ある程度はやれると考えていたのですが、
甘かったと後悔しています。
これ以上はやれないと思い、
上司の退職の意思を伝えたところ、
「もう少しやってみないか」
「1年もたたずに投げ出すなんて、もったいない」
と励まされました。
上司は自分を見捨てていない、
まだ期待してくれている、
と思うと辞めたいという決心が揺らいでいます。
もう少し頑張ってみようか、とも思い始めました。
上司も、入社1年という区切りをつけて、
それまで死ぬ気で頑張ろう、
と檄を飛ばしてくれています。
しかし、いったん辞めるといった以上、
上司や会社からの心証は
すでに悪くなってしまったのでは?
という不安があります。
このまま、保険外交の仕事を続けるべきなのでしょうか?
A.身も蓋もないことから言います。
上司が、あなたのことを案じている、
という事実は「一切ありません」。
上司の「期待している」
などという言葉は、全部ウソです。
理由ですが、上司の発言に頻繁に登場する
「入社してから1年はあきらめず頑張れ」
という言葉が、
「上司の保身のための言葉」
でしかないからです。
なぜ、こんなことが言えるのでしょうか?
生命保険の会社は、
営業マンが入社して短期で辞めると、
「上司の」査定に響くからです。
つまり、今あなたが辞めると、
上司は「会社からの自分の評価が落ちて」
困ることになります。
言い換えますね。
あなたが入社1年後に辞めた場合は、
上司の評価が落ちることはありません。
ですから、上司の本音としては、
「こいつは見込みがない」
「しかし、今辞められたら俺の社内評価が悪くなる」
「何とか1年は引き延ばそう」
という、それはそれは黒いものになります。
その1年の間、あなたがいかに契約が取れず、
生活が困窮しようとも、
上司はそんなことは気にもしません。
全ての上司がそうだ、
というつもりは当然ありません。
何ごとにも例外はあります。
よって、本当に部下を心配して
指導にあたる上司もいるでしょう。
しかし、全体から見るとその割合は
極端に少ない、
というのが冷酷な現実です。
生命保険会社の営業マネージャーは
営業マンをスカウトするのも仕事ですから、
スカウトしてきた中で誰かがものになれば
それで良いのです。
見込みがなかったり、辞めたがっている部下は、
自分のペナルティにならない範囲で
順次いなくなってもらっても全く困らないのです。