1.雇用保険
会社を退職したらお世話になるのが、失業保険です。
これは、雇用保険法という法律で加入要件と支給要件が定められている制度です。
まっさきにイメージが浮かぶのは、退職したときに受け取る失業保険やその他の給付金ですが、これらは、雇用保険に基づいて支給される給付金のごく一部です。
なお、失業保険という呼び方は昔の言い方で、正確には「求職者給付」といいます。
失業保険は、失業中の人が再就職活動に専念できるよう、必要なお金を支給するという役割があります。
失業保険をもらっている期間にこっそりアルバイトなどをすると不正受給ということで厳しく処分されますが、これは上記の「失業保険を支給する目的」から外れているからです。
さて、失業保険以外にも、雇用保険制度では様々な給付金制度を設けていることは少し触れました。
下記に、給付金制度の一覧を示しておきます。
・基本手当
・技能取得手当(受講手当・通所手当)
・寄宿手当
・傷病手当
・高年齢求職者給付金
・特例一時金
・日雇労働求職者給付金
なお、雇用保険は失業中の人ばかりが対象ではありません。
再就職が決まった人に対して、支障なく仕事に臨めるよう、一定の手当が出ることがあります。
例えば、遠方の会社に就職が決まった場合、引っ越し費用の一部を支給するといった具合です。
こういった制度には、下記のようなものがあります。
・就業促進手当(再就職手当・就業手当・常用就職支度手当)
・移転費
・広域求職活動費
2.雇用保険のいろいろ
1.では、雇用保険の概要を説明しました。
雇用保険で設けられている給付金の種類は、一般の方が想像するよりもずっと豊富です。
しかし、これらの給付金は基本的には申請しない限りもらうことはできません。
もらい損ねにならないよう、自分がもらえる給付金の種類はもれなくチェックしておきたいところです。
それでは、それぞれの種類の給付金を見ていきましょう。
「求職者給付」の中で、一般的に失業保険と呼ばれているのが、「求職者給付の基本手当」です。
受給資格は、
・65歳未満
・雇用保険の加入期間が半年(会社都合退職の場合)1年以上(自己都合退職の場合)
もらえる金額は、退職前180日の給与が基準となり、その5割~8割が支給されます。
また、支給日数は雇用保険の加入期間や退職理由によってかなりの差があり、90日から330日と、大きな幅があります。
なお、この失業保険を330日以上受講するルートもあります。
それが、職業訓練です。
基本手当の受給者が、ハローワークから受講指示を受けて、職業訓練などを受講すると、訓練の終了日まで基本手当をもらうことができます。
これを「訓練延長給付」といい、最高で2年間の延長が可能です。
職業訓練を受講した日1日あたりに支給される手当もあります。
・受講手当(1日500円)
・通所手当(交通費・実費支給・最高42,500円まで)
・「寄宿手当」(宿泊を伴う場合の宿泊費)
その他の手当も、ざっと見ていきましょう。
傷病手当・・・病気で転職活動ができない期間に支給される
高年齢求職者給付金・・・65歳以上で継続雇用されていた人が退職したときに支給される
特例一時金・・・季節労働者など、短期雇用特例被保険者が失業した場合に支給される
日雇労働求職者給付金・・・日雇労働被保険者が仕事がない場合に支給される
このように、年齢・雇用形態によって、利用できる給付金制度も変わってきます。
自分が利用できる給付金は、退職前にしっかりとチェックしておきましょう。
3.再就職でもらえる給付金
前回は、求職者給付についてお話しました。
求職者給付は、失業したときにもらえる給付金です。
国としては、再就職してもらうために給付金を支給しているのですから、早めに定職に就いてくれれば、それに越したことはありません。
しかし、失業者にだけ手当を出すと、「全部もらってから、それから本気を出そう」などと考える人が大勢出てくることは容易に想像できます。
そこで、国は早期に再就職した人に対しても給付金を設け、再就職に対するインセンティブを与えているのです。
この給付金を、就職促進給付といいます。
すごく簡単に表現すると、「早めに再就職したら、お金をあげますよ」というわけです。
この「就業促進手当」は、再就職した仕事の内容や、年齢などによって何種類かに分かれています。
・再就職手当・・・1年を超える期間で、再就職した場合に支給される給付金
・就業手当・・・1年以内のパートに就職した場合に支払われる給付金
・常用就職支援手当・・・45歳以上、障害者が再就職した場合に支給される給付金
その他、再就職した際の事情によって支給される給付金もあります。
それが、移転費です。
移転費は、就職に伴って引っ越しせざるを得ない場合に支給される給付金です。
また、再就職先が決まって引っ越す場合だけでなく、仕事を遠方に探しにいく場合にも広域求職活動費として、交通費・宿泊費が支給されます。
といっても、これらの給付金をもらうためには厳しい条件が課されています。
事前に、ハローワークで支給条件を確認してから行動するようにしましょう。
4.まとめ
雇用保険というと、多くの人がまっさきに思い浮かべるのは失業中に支給される失業保険です。
しかし、雇用保険にはそれ以外にも多くの種類があり、労働者をバックアップする制度として存在します。
存在するだけで、肝心の労働者への知名度が低いのが本末転倒な感がありますが・・・
再就職手当など、意識していないともらい損ねる給付金もありますから、損をしないためには事前の情報収集が何より重要です。