■ 第71回 知らない内に労働条件が悪化する時代
正式にはまだ成立していませんが、
「知らない内に労働条件が悪化する」
法律が制定される見込が濃厚です。
これは、
「労働契約法案」
と呼ばれています。
今までは、
労働条件を不利な方向に変更するには、
労働者の合意が必要でした。
しかし今後、就業規則を変更するだけで、
会社側は好き勝手に
労働条件を悪化させることが
可能になります。
一応
「変更の程度が合理的である範囲内で」
という制限はあります。
ですが、合理的かどうかなど、
会社も労働者も判断できないのが実情です。
現実には、
好き放題の労働条件の引き下げが
横行することになるのでは・・・
という予想が容易についてしまいます。
この法案のように、
「権力がある側にとって有利な法律」
は、往々にして
「拡大解釈されて、好き放題に濫用される」
という事態に陥りがちです。
こういった法案が通るということは、
「人を雇う・使う」側の意向が
立法に色濃く反映されているということです。
今後も、雇われて働く側にとっては
つらい制度変更が続くのではないか・・・
と思うと憂鬱になりますね。
■ 編集後記
本文中にある、
「拡大解釈されて、好き放題に濫用されている」
法律の例を挙げておきます。
典型的なのは、「管理職の残業代」です。
「管理職は残業代が出ない」
といって残業代を払わない会社が
多くありますが、
社内での「管理職」と、
労働法上の「管理職」は全くの別物です。
労働法上は、ほぼ役員クラスでないと、
「残業代を払わなくてもいい」
管理職にはあたらない
という解釈が一般的です。
しかし、多くの会社では
係長あたりから「管理職」として扱い、
残業代を支払いません。
このような拡大解釈によって、
多くのサービス残業が横行しています。
「自分は管理職だから・・・」
と、サービス残業をさせられていることすら
気づいていない人も多くいます。
あなたの周りの係長・課長さんは
このトリックに気づいておられますか?
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Q&A
Q.給与カットの合理性について教えて下さい。
会社が業績不振とのことで、
来月から給料が30%、
一律カットされることになりました。
会社からの一方的な通達で、
事前に相談などもありませんでした。
また、個別社員をターゲットにした減給
ではなく、
全社員に適用される給与減額です。
このような一方的、かつ大幅な
給料カットというのは、
働く側としては
受け入れるしかないものでしょうか?
会社の側は、
「社員をリストラしたくないから、
みんなで痛みを受け入れるため」
と説明しています。
しかし、給与30%カットでは
生活が成り立たないと嘆いている
社員も多数います。
会社の業績が深刻なのは確かですが、
どうすればいいのでしょうか?
A.まず、
給与カットが30%というのは、
働く側にとって、明らかに
条件悪化ですね。
当たり前じゃないか、
と思われるでしょうが、
これはつまり、
「労働条件の不利益変更」
に該当するということです。
そして、この不利益変更は、
会社の一方的な決定で行うことは
現時点では「できません」
つまり、あなたの会社で今回行われた
給料30%一律カットは、
正式な手続きを経ていないため、
無効となります。
給与30%カットなど、
労働条件の不利益変更については、
合理的な理由があり、
会社側から給与減額について
きちんと説明があることが必要です。
この説明は、給与減額を実施する前に
行わなければなりません。
さらに、労働組合、
あるいは労働者の過半数を代表する社員と
合意しなければなりません。
この手続き面で、今回のケースは
まったく不適格です。
変更の内容が合理的かどうか?
という検討をする前に、
すでに手続き面で不備があります。
ということで、
適法な部分が見つからないほど
デタラメな減額ですから、
出るところに出れば、
会社はこの給与カットを撤回せざると
得なくなる可能性が高いです。
しかし、給与がまともに支払えなくなった、
という会社ですから、
見限ってしまうのが、
最も合理的な判断です。