失業保険をもらうために必要な雇用保険加入期間

1.失業保険をもらうために必要な雇用保険加入期間

退職後、失業保険をもらうには一定期間、雇用保険に加入していた履歴が必要となります。

では、どれくらいの期間、雇用保険に加入していれば受給資格が発生するのでしょうか?

これは、退職理由によって、明確な線引きがされています。

事前にハローワークで確認しておくのもお勧め。
雇用保険加入期間は、事前にハローワークで確認しておくのもお勧め。

まず、自主退職や定年退職した場合について見ていきましょう。

この場合、退職日からさかのぼって2年間、勤務日数が11日以上ある月が12ヶ月あることが必要です。

フルタイムで1年以上働いてきた場合、まずこの条件は満たしますので、さほど細かく考
える必要はないでしょう。

しかし、退職日前2年以内で、出産や育児、病気療養などの理由で休職した期間がある場合は退職時期を慎重に設定する必要があります。

次に、会社都合退職や倒産によって会社を辞めた場合について見ていきます。

この場合、退職日からさかのぼって1年の間に、勤務日数が11日以上ある月が6ヶ月以上あれば失業保険の受給資格を満たします。

簡単にいうと、会社都合退職や倒産の場合は、自己都合退職に比べて、雇用保険の必要加入期間が半分で済むのです。

では、今の会社での雇用保険加入期間が上記に満たない場合は失業保険をもらうことができないのでしょうか?

例えば、半年勤務した会社を自己都合退職したようなケースです。

この場合、以前の勤務先での雇用保険加入期間を通算できることがあります。

しかし、転職の間に1年以上のブランクがあったり、失業中に失業保険をもらっていたりした場合はこの「雇用保険加入期間の通算」はできません。

また、この通算はハローワークが自動的にやってくれるものでもありませんので、自分で申告する必要があります。

2.失業保険がもらえる「失業の状態」とは

雇用保険法では、失業保険がもらえるのは「失業の状態」にある場合に限られると定められています。

この失業の状態というのは、単に会社を辞めていて、仕事をしていない状態を指すのではありません。

会社を辞めた=失業の状態ではないので注意
会社を辞めた=失業の状態ではないので注意

一般的な失業の意味とはニュアンスが違いますので、注意する必要があります。

雇用保険法でいう失業の状態とは、下記の条件を満たしている場合を指します。

1.仕事をしていない
2.再就職する意思と能力がある
3.転職先さえ見つかれば、明日からでも働くことが可能
4.積極的に求職活動をしているが、再就職先が見つかっていない

これらの条件を全て満たしていて、初めて失業保険が支給されます。

逆にいうと、これらの条件にひとつでも該当しない場合は、仮に仕事をしていなくて収入がない場合であっても、失業保険は支給されないのです。

具体的には、次のような場合が該当します。

1.病気、けが、妊娠、出産、育児、家族の介護などの理由ですぐに働けない
2.結婚をして専業主婦(主夫)となり、家事に専念する
3.自営業(準備を含む)を始めた・・・仮に売上がゼロでも、失業保険支給対象外です。
4.定年退職し、すぐの再就職を希望していない
5.新しい仕事に就いた(収入がゼロの場合も含む)
6.会社・団体の役員に就任した(就任予定や名義だけの場合も含む)
7.学業に専念するとき(夜間学校は除外)

また、失業保険をもらえる期間は、退職後1年です。

何も手続きをしないまま退職後1年を経過してしまうと、失業保険の受給日数が何日残っていたとしても1円も受給することができなくなります。

退職後、長期間に渡って海外渡航をする人にありがちなのですが、ここをミスして数十万円をもらい損ねる人はかなりの数に上ります。

退職後の海外渡航などですぐ失業保険を受給する予定がない人は、1年というリミットを計算に入れて退職後の予定を立てることをお勧めします。

3.失業保険はいくらもらえる?

失業保険がいくらもらえるのかは、重要な問題です。

多くの人にとっては、退職後の収入は失業保険だけだからです。

失業保険がもらえる総額は、「1日あたりにもらえる金額」に、「失業保険がもらえる日数」をかけた金額です。

今回は、1日あたりに給付される金額について見ていきましょう。

失業保険で受給できる1日あたりの金額は「基本手当日額」と呼ばれています。

この「基本手当日額」は、退職直前6ヶ月間にもらっていた給与額を、180日で割って、それに給付率をかけた金額になります。

つまり、「退職直前半年の、1日あたりの給与」×「給付率」が基本手当日額です。

この場合に計算の基礎になる給与は、基本給だけではなく、交通費を含む、あらゆる手当が入ります。

退職直前に遠方に引っ越して交通費を上げておくと、失業保険の日額が多少は上がるということです。

しかし、ボーナスや臨時手当、退職金など、毎月支払われるわけではない性格のお金は、この計算には含められません。

毎月の給与額が低くて、ボーナスで補うタイプの会社にいた人は、この点では不利になります。

逆に、ボーナスがなくて、月々の基本給が高めだった人には有利です。

このへんは、自分ではどうしようもない要素ですので不満でもあきらめて受け入れるしかありません。

計算は、社会保険料や税金、年金を差し引く前の支給総額で計算されます。

失業保険には税金がかからないことを考えると、これはありがたい措置です。

給付率は45%が最低で、80%が最高となっています。

次回は、この給付率について詳しく説明していきます。

オフィスでの仕事がなつかしくなる頃です。
退職して1ヶ月もすると、オフィスでの仕事がなつかしくなります。

4.失業保険の給付率とは

失業保険で、もらえる金額の計算方法、続きです。

今回は、給付率について説明します。

前回、
失業保険で1日あたりにもらえる金額=退職直前半年間の給与日額×給付率
であることを見てきました。

この給付率は、45%から80%の間で決められます。

失業保険の目的は、「失業中に転職活動に専念できるように、生活に必要なお金を支給する」ことです。

そのため、在職時の給与が低かった人はこの給付率が高い数字、つまり80%に近くなります。

逆に、給与額が高かった人は給付率が低く、45%に近づきます。

「私は月給100万円だったので、給付率が仮に45%でも45万円が毎月保証されるのですね」
・・・残念ながら、そうはいきません。

なぜかというと、基本手当日額には、上限額と下限額が定められているからです。

どれだけ給与が高かった人であっても、上限額を超えた場合は超えた分はカットされてしまうのです。

低い場合は逆で、計算上、下限額を下回った場合でも、下限額は支給されることになります。

平成26年度は、賃金日額の下限額が2,300円、基本手当日額の下限額は1,840円です。

なお、賃金日額の下限額は2050円、基本手当日額の下限額は1640円です。

上限は年齢によって異なり、20代だと賃金日額の上限額が12,780円、基本手当日額の上限額が6,390円となっています。

それ以外の年齢別は、下記を参照してください。

30~44歳 賃金日額の上限額14,200円 基本手当日額の上限額7,100円
45~59歳 賃金日額の上限額15,610円 基本手当日額の上限額7,805円
60~64歳 賃金日額の上限額14,910円 基本手当日額の上限額6,709円

なお、上記の年齢は「離職時の年齢」であって、失業保険の手続きをしたときの年齢ではないことに注意してください。

5.まとめ

・失業保険をもらうために必要な雇用保険加入期間は、会社都合退職や解雇、倒産の場合で6ヶ月、自己都合退職で1年。

・失業保険がもらえる「失業の状態」とは、働き始めようとすれば、明日からでも働ける状態を指す。海外に滞在していたり病気で療養している場合はこの条件を満たさず、失業保険の受給資格はない(建前上で、いろいろ抜け道を駆使している人はいます)。

・失業保険でもらえる金額は、在職中の日給の45%~80%が目安。しかし、上限が定められているので給与が高かった人は45%以下になる可能性大。

会社を辞めたら自動的に失業保険がもらえると考えている人が多いのですが、受給には細かい条件が課されています。

もちろん、ある程度の長期間、フルタイムで働いていればほとんどの人がクリアできているはずですが、念のため会社に退職を伝える前に確認されておいた方がよいでしょう。

会社を辞めてから、あてにしていた失業保険が出ない、となると多額の貯金がない限り、死活問題に発展しかねないからです。