都道府県が実施している職業訓練、高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施している職業訓練

1.都道府県が実施している職業訓練

職業訓練では、実施主体が2種類存在します。

ひとつが、自治体である都道府県。
もうひとつが、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」という長い名称の独立行政法人です。

職業訓練も、入所試験があります
職業訓練も、入所試験があります

今回は、自治体である都道府県が実施する職業訓練について見ていきましょう。

自治体が実施する職業訓練は、常設の職業能力開発校で行われる訓練コースが多いのが特徴です。

それだけに長年の歴史を持つ職業訓練コースが多く、地元の企業などに、職業訓練修了生向けの就職枠が用意されていることも多いのです。

これは、自治体に必要なスキルを持った労働者を養成する職業訓練コースが充実していることを意味します。

例えば、工場が多い地域だと、溶接や金属加工など、工場で仕事をするにあたって必要となる技能を学ぶ職業訓練が数多く用意されています。

その他、電気工事、土木、機械加工、金属加工など、歴史がある職業訓練コースは現場系が多くなっています。

しかし、こういった長い歴史を持つ職業訓練コースばかりではなく、最近の実情にあわせて新規の職業訓練も設置されています。

例えば、総務・人事やプログラム、webサイト制作などを職業訓練コースで学ぶことも可能です。

こういった新設された職業訓練は、外部の資格専門学校に委託して実施されていることがほとんどです。

残念ながらコースの数は少なめですが、興味がある人は探してみるとよいでしょう。

なお、実施主体が都道府県だからといって、住んでいる地域の職業訓練以外、受講できないということは全くありません。

となりの都道府県に職業訓練を受けに通っても全く問題はないのです。
そのための通所手当(交通費)支給です。

 

2.高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施している職業訓練

前回、職業訓練の実施主体は、自治体である都道府県と、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」のふたつであることを説明しました。

今回は実施主体のふたつめ、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が実施する職業訓練の特徴を見ていきましょう。

高齢・障害・求職者雇用支援機構の業務は、職業訓練の実施ばかりではなく多岐にわたります。

下記に代表的な業務をあげておきました。

1.公共職業訓練の実施、労働者に対するキャリアコンサルティングなどの「職業能力開発に関する業務」
2.会社側からの雇用に関する相談など「雇用開発に関する業務」
3.労働者の財産形成の促進および生活安定のための持家取得資金、教育資金の融資などの「勤労者の財産形成に関する業務」

高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する職業訓練にも、常設の職業訓練校があります。
数は自治体に比べると少なめです。

常設の職業訓練校として、職業能力開発大学校(ポリテクカレッジ)、職業能力開発短期大学校、職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)が挙げられます。

自治体が実施する職業訓練と同様、外部の資格試験予備校などに委託した職業訓練コースも実施しています。

職業訓練コースはバラエティに富んでいますが、今でも工業系が主流です。
職業訓練コースはバラエティに富んでいますが、今でも工業系が主流です。

職業訓練コースを探すときに気をつけなければいけないのは、情報がばらばらに提供されているという点です。

このため、ある人は自治体が実施する職業訓練だけを見て、ある人は高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する職業訓練だけしか調査できていないといったことは珍しくありません。

選択肢は多い方が、より自分に必要な職業訓練コースが見つかりやすいというのは当たり前のことです。

情報提供側に問題があるとは思いますが、これについて文句を言っても始まりません。

両方が用意している職業訓練コースを縦断して、最適な訓練コースを見つけ出しましょう。

 

3.仕事を辞めてすぐに失業保険をもらう

職業訓練を受講することで、失業保険にある3ヶ月の受給制限期間は解除され、すぐに失業保険の支給が始まります。

これを利用すれば、仮に自己都合退職であっても会社を辞めてすぐに失業保険をもらい始めることが可能です。

といっても、職業訓練を申し込んでから実際に訓練がスタートするまでは結構な時間がかかります。

受講申し込みから、選考試験を受け、合格発表を待ち、受講スタートといった流れになり、申し込み締切から短くて2ヶ月、長いと3ヶ月は見ておかなければなりません。

「それなら、3ヶ月の受給制限期間が解除されても意味がないのでは?」
と思われた方がいらっしゃるかも知れません。

しかし、会社を辞めてすぐに職業訓練をスタートさせること自体はそれでも可能なのです。

なぜかというと、職業訓練コースへの受講申し込みは、会社を辞める前であっても受け付けてもらえるからです。

つまり、選考に2~3ヶ月かかるのであれば、退職予定日の2~3ヶ月前までに希望の職業訓練コースに受講申し込みを済ませておけばよいのです。

選考試験を受けるのが在職中になるなど、時間のやりくりは厳しくなりますが、努力の見返りとして、受給制限期間を退職後に即ショートカットすることが可能になります。

なお、「退職予定日の2~3ヶ月前に受講を申し込む」という書き方だと曖昧な印象を与えるかも知れませんが、実行にあたっては迷うことはありません。

当然ですが、職業訓練コースを紹介する資料には「訓練の開講日」が明記されているからです。

同様に、「受講申し込み締め切り日」も明記されていますので、具体的な日程の組み方については、まず迷うことはないでしょう。

 

4.まとめ

・職業訓練の実施母体は、都道府県と独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」のふたつがある。

・募集もそれぞれ行っているため、例えば「都道府県で募集している職業訓練」だけを見て「行きたい職業訓練がない」と早まらないように注意する

・職業訓練を受講すれば、すぐに失業保険の支給が開始される。

しかし、申込みから受講開始まで2ヶ月程度はかかるので、退職後すぐに失業保険が欲しい場合は「在職中に申込み、合格通知を受け取っておく」スケジュールを組む必要がある。