1.扶養に入ったら失業保険はもらえないのか
失業保険は、扶養に入るともらえない・・・
このように考えている人は多いです。
しかし、これは必ずしも正しくありません。
年間の収入が103万円以下であれば働いていても扶養に入れるのですから、失業保険をもらっている=扶養に入れないというのは理屈としておかしいのです。
では、扶養に入ることと失業保険をもらうことを両立させる判断基準は何でしょうか。
これは、実は働いている人と全く同じ基準で判定されます。
すなわち、年収が103万円以下かどうかです(103万円というのは、税金の計算で使われる基準です。健康保険および年金で扶養に入れるのは年収130万円未満となります)。
「では、失業保険が1日6,000円で90日なら54万円だから扶養に入れるということでしょうか?」
いえ、残念ながらその計算は正しくありません。
理由は、「失業保険1日分の金額を、365日もらったと仮定して見込み年収を計算するから」です。
つまり、失業保険の支給日数が何日であろうと関係ありません。
一律、1日あたりの失業保険の額×365日です。
これで計算すると、失業保険をもらいながら扶養に入れるのは、「1日あたりの失業保険の金額が3,600円弱」となります。
失業保険の日額この金額以下になる人は少数派になってしまう、というのが正直なところです。
「90日しか失業保険が出ないのに、なんで365日で計算されるんですか。おかしくないですか?」
そういう疑問を持たれる人も少なくないでしょう。
しかし、失業保険の受給が全部終わってしまえばその後は扶養に入れますので、決して「90日しか失業保険をもらえないのに、1年間扶養に入れない」ということではありません。
このため、一般的には下記のようなスケジュールで動くことでもっとも負担を減らすことができます。
受給制限期間 → 扶養に入る
失業保険が出ている期間 → 扶養から外れる(日額3,600円弱であれば外れなくてよい)
失業保険の受給が終了 → 再び、扶養に入る
2.扶養に入ると健康保険はタダ?
共働きの家庭であれば、夫と妻、それぞれが個別に健康保険に加入していたと思います。
しかし、どちらか一方が退職してもう一方の扶養に入った場合、健康保険料はタダになるのでしょうか。
残念ながら、そううまくはいかないケースが多いのが正直なところです。
理由ですが、失業保険は、社会保険料の収入基準とみなされているからです。
前回のお話でも触れましたが、失業保険1日あたりの額×365日分を、収入としてもらう見込みとして計算されます。
つまり、失業保険1日あたりの額×365日分が130万円を超えてしまう場合、健康保険の扶養から外れてしまいます。
この場合は、退職した側が独自に国民健康保険料(あるいは、任意継続の保険料)を支払っていくしかなくなります。
といっても、これはあくまで原則です。
実は、健康保険組合にもいろいろあって、厚生労働省の指導を厳格に守っている組合と、そこまでガチガチではなく、比較的柔軟な運用をしている組合に分かれます。
仕事を続ける方が所属している健康保険組合が、運よくユルい運用をしているところで逢った場合はチャンスです。
普通なら、失業保険を受給している期間は自分で健康保険料を支払うしかありません。
しかし、このような状態でも扶養と認めてくれれば、「タダで」健康保険に加入させてもらうことができるのです。
自分で調べることはほぼ不可能ですから、退職後に健康保険組合(あるいは協会けんぽ)に必ず確認しましょう。
収入が乏しい失業中に、払わなくてもいい健康保険料を支払うのは避けたいところです。
3.扶養に入ると、国民年金保険料はタダ?
会社を辞めて、自分に収入がなくなった場合。
夫、あるいは妻の扶養に入れば、追加負担なしで国民年金に加入できるのでしょうか。
社会保険料に関していえば、扶養に入れる条件は見込み年収=130万円未満です。
この条件さえ満たしていれば、国民年金保険料は免除されます。
つまり、保険料を支払うことなく、保険料を支払った扱いになり、将来の年金受給権が発生します。
「私の夫(妻)は、厚生年金なので、国民年金とは扱いが違うのではないでしょうか?」
そういう疑問を持たれる方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、厚生年金というのは単独で運用されている制度ではありません。
まず、国民年金にあたる基礎年金という土台があって、その上に厚生年金部分が乗っている設計になっています。
よく「厚生年金は2階建て」という表現をしますが、1階が国民年金(基礎年金)、2階が厚生年金というわけです。
厚生年金に加入している配偶者の扶養に入ると、基礎年金部分が「年金保険料を支払わずに」受給権を得ることができます。
これを「3号保険者」といいます。
厚生年金部分が上乗せされるわけではありませんので、この辺を誤解してしまうと将来の生活設計が狂ってしまいます。
なお、これは自分で申告しない限り適用されることはありません。
退職したら、間をおかずに申請しましょう。
窓口は、市区町村の国民年金課になります。
なお、最近は政府がこの「3号保険者」が優遇されすぎているとして廃止する方向に持って行こうとしている感があります。
とはいえ、廃止される前に積み上げた加入期間が無効になるわけではありませんので、3号保険者に入るメリットは未だに絶大です。
4.まとめ
・扶養に入ると失業保険をもらえないとは限らない
・しかし、多くの人は扶養から外れる。失業保険の日額がかなり低い場合のみ、失業保険をもらいながら扶養に入ることが可能。
・健康保険も同様。失業保険の日額が一定額を超えると、失業保険をもらっている期間は扶養から外れなければならない。
・配偶者が厚生年金の場合、扶養に入れば保険料負担はなくなる。