■ 第21回 意外と知らない労働時間
あなたの会社が朝9時に始業だとします。
ですが、あなたは制服に着替えるために
8時45分には会社に着いています。
さて、この8時45分から9時までの時間は、
労働時間になるのでしょうか?
社長
「それは仕事の準備であって
働いているわけではない。
労働時間にはならない」
だいたい、こういう答えが返って来ます。
残念ながら、それは正しくありません。
答えは、
「始業前であっても、
仕事のために拘束されている以上、
労働時間にあたる」
です。
となると、毎日15分で
年間240日労働と考えると・・・
年間60時間の残業時間になります。
残業代も10万円くらいにはなりそうですね。
現実的には、勤めている最中に
残業代を請求する度胸がある人はいないでしょう。
ですが、
「もう辞めるし、会社とモメてもいいし、やっちゃえ」
と腹を決めた場合、
この時間を足すかどうかで
残業代が大きく変わってきます。
参考:会社が、
莫大な残業代を支払うことになった事件です↓
では、むちゃくちゃ早く会社に行って
残業代を稼ぐ作戦は有効か?
というと、
実は気をつけなければならないポイントが
結構多いのです。
やみくもに早朝出勤をしても、
おさえるポイントを間違っていると
「本当のタダ働き」
になります。
そのおさえるポイントとは何か?
次回はそのあたりを見ていきたいと思います。
このまま、下の記事にお進みください。
■ 第22回 意外と知らない労働時間2
前回は、
「始業前、仕事の準備に費やした時間も、
労働時間になる」
ということを述べました。
では、朝早くに会社に行って、
残業代を稼ぐ・・・
という作戦は有効でしょうか?
結論から言うと、
「朝早く会社に行って、必要な仕事をしていれば」
有効です。
「労働時間の範囲」
については最高裁判所まで
争いがもつれこんだこともあります。
その判例では、
「必要な業務を」
「管理者の指揮監督下で」
「事務所でおこなっている」
場合は、
【労働時間にあたる】
という結論になりました。
●朝早く会社に行って、
コーヒーを飲んでボーっとしている
●えんえん私用でスマホをいじっている・・・
といった場合。
これらの行為はひいき目に見ても
「必要な業務」とは言えません。
ですから、
労働時間と主張することはできません。
また、
「管理者の指揮監督下」という部分から、
上司が先に出社してなければ
労働時間にあたらないのでは・・・
と不安になるかも知れません。
これも裁判で、
「黙示の指示でもよい」とされました。
簡単に言うと、
●あなたがいつも人より早く出社して
仕事をしていることを上司が知っている
●そのことについて
「そんなに早く来なくていいよ」
とも何とも言っていない
場合は黙認していることになりますから、
「管理者の(黙示による)指揮監督下で」
仕事をしているということになります。
逆に、不利な点をひとつ。
始業時間前にラジオ体操なんかを
やっている会社があります。
これが、
「強制」でなく「強く推奨」されているだけの場合、
「労働時間にあたらない」
とされてしまった裁判もあります。
「ラジオ体操」=業務に必須の準備ではない
「強く推奨」=参加しなくても業務に支障はない
という理屈なのでしょうが・・・
結構、判断が微妙なのが
お分かりいただけると思います。
・・・今回は
えらく面倒くさい内容になってしまいました。
理屈はこんなところですが、
裁判にでもならない限り、
ここまで細かく事実関係を調べられることは
まずないでしょう。
なので、会社との交渉の中で
「始業前に仕事をしても残業時間です!
最高裁判所で判決が出ています!」
と主張して、
残業代を要求するのはあなたの自由です。
少なくとも、ウソはついていません。
あなたが始業前に本当に仕事をしているかどうか、
それは別の問題になります。
次回記事: