■ 第79回 労働法が適用されない人たち
労働法は、雇用側の横暴を抑制し、
「労働者側の権利を守る」
という性質が強いものになっています。
つまり、雇う側にとっては
「労働法など邪魔な存在でしかない」
というのが本音です。
この結果、あの手この手で
労働法の適用を逃れようとする会社が出てきます。
実質的に「雇用契約」なのに
「請負契約」にする「偽装請負」
は大きな問題になっています。
請負契約にしたがるのは、
雇用関係にない、
という形を作るためです。
雇用関係でなければ、
労働法の適用もありませんし、
保険も全額労働者負担です。
簡単にいえば、
雇用関係という形さえ取らなければ、
あらゆる義務から解放される、
と考える企業がゴロゴロしているのです。
もちろん、そのようなやり口は
完全な「脱法行為」で、
おおよそ正当化されるものではありません。
さて、今回は最近出てきた
「偽装請負」ならぬ「偽装雇用」
について書きます。
「アルバイトで働き始めたら、
個人事業主にされていた」
という事案です。
何のことやら分からないと思いますが、
外食産業のゼンショー(東証一部上場)で、
実際に起きている事例です。
ゼンショーというのは、
牛丼チェーン店「すき家」
を全国展開している会社です。
その他、多くの外食産業を買収などによって
その傘下に収め、
現在では日本有数の規模を誇る
一大外食チェーンとなっています。
で、このゼンショーですが、
「当店の店員は、
個人事業主との業務委託契約である」
という主張を行っています。
つまり、すき家の店員は、
全員個人事業主なのだそうです。
理由は、
「シフトの調整はアルバイトに任せているから」。
個人事業主なのですから、
当然労基法も労災法も関係ありません。
保険は全額自己負担です。
言っている会社自身も理論破綻しているのは
百も承知なのでしょうが、
これを認めると多大な費用負担がのしかかってくるので、
認めるわけにはいかない
・・・というのが本音なのだと思います。
そもそも、時給ベースで働いている人が
請負契約だとか委任契約という時点で
矛盾が生じています。
そしてさらに悪いことに、
これはゼンショー一社での問題、
というわけではないのです。
私のところに寄せられる相談でも、
似たような事例を時折聞きます。
特に中小IT系が多いですね。
入社数ヶ月で、
「個人事業主になれ。嫌ならクビだ」
と強要されるそうです。
個人事業主にする目的は、
当然人件費を抑制するためです。
これはまだマシなほうで(いや、十分おかしいですが)、
知らない内に契約内容が変わっていた
といったことが本当に起きています。
今回のゼンショーの話を聞いて、
「ひどい会社があるな~」
と他人事のように笑っていたら、
ある日自分も同じ目に遭っていた・・・
ということは十分に考えられます。
関連記事:
マクドナルドとセブンイレブン
■ 編集後記
世の会社は、
人件費の抑制にやっきになっています。
偽装請負などは、
その土壌の中から生まれてきた
「脱法手段」です。
今回紹介したゼンショーのケースは、
偽装雇用と呼ばれています。
偽装請負や偽装雇用の話を聞いて、
「そんなことをしていたら会社が信用を失う」
と思う会社。
「いいことを聞いた。当社もやろう」
と思う会社。
あなたがお勤めの会社はどちらでしょうか。
「社員は使い捨て」
と考えているような会社に勤めている方は、
ご自身が
「何の契約に基づいて仕事をしているのか」
を確認されておいたほうが
後々ひどい目に遭わずに済むかも知れません。