■ 第88回 紹介予定派遣の落とし穴
ここ数年、
「紹介予定派遣」
のかたちで就職する人が増えてきました。
紹介予定派遣、というと、
聞き慣れないという人も多いでしょう。
これは、
「将来社員として派遣先企業で働く」
ことを前提に、
まずは派遣社員として働くという制度です。
会社側、社員側ともに、
「お互いを見極めてから、
社員登用に踏み切れる」
ということで人気があります。
ただ、これにはひとつ落とし穴があります。
派遣社員でいる間は、
派遣先企業の勤務期間にはなりません。
これは、派遣社員は派遣「元」企業との
雇用契約になっているからです。
つまり、ボーナス査定の全期間に
派遣先の会社に在籍していたとしても、
「その期間は派遣社員だから」
ということでボーナスが支給されなくても、
一切文句を言うことはできません。
「査定期間、派遣だったからね」
また、有給休暇が発生するのは
入社後半年からになりますが、
これも派遣社員時代は社歴になりませんので、
「社員に登用されてから」
半年後でないと有給がもらえません。
このようなことは、
派遣会社の担当者も
親切に教えてはくれないでしょう。
紹介予定派遣は、
メリットを聞くと
非常に良い制度に思えます。
しかし、派遣先の勤務期間として
評価されないことによるマイナスも含めて、
総合的に考えるべきだと思います。
■ 編集後記
紹介予定派遣ですが、
派遣社員として勤務するのは
6ヶ月が限度になっています。
この6ヶ月の間、
もしも派遣「元」から
有給休暇が与えられているなら、
それは消化できます。
しかし、この有給休暇は
あくまで派遣「元」の有給休暇ですから、
派遣「先」に正社員に登用された時点で
消滅します。
紹介予定派遣は、こういった部分でも不利ですね。
関連記事：
改正雇用保険法、施行＆派遣社員が、失業保険をすぐもらえるように
２．Ｑ＆Ａ
Ｑ．以前の会社を辞めて、現在求職中です。
事務職を希望しているのですが、
募集されることが少ないようで、
応募しても競争率が高すぎて、
1年間仕事に就けていません。
少し焦っているのが正直なところです。
できれば正社員として働きたいのですが、
現時点で落とされつづけていることを
考えると、厳しいかと思います。
紹介予定派遣という制度があるそうですが、
まずはこの制度を利用して、
まず派遣社員として勤め、
派遣先企業にアピールする。
その後、正社員の座を得る、
という戦略は有効でしょうか？
直接、正社員になれないのであれば、
紹介予定派遣という
ワンクッションを置くのも
ありかな？
と考えています。
紹介予定派遣を利用する場合、
どのように動けばいいのか
教えて下さい。
Ａ．まず、大前提からお話します。
紹介予定派遣で勤めたからと言って、
必ず正社員になれるとは限りません。
初めに派遣社員として勤める、
ということは、
日々の仕事ぶりを派遣先企業に
厳しくチェックされている、
ということを意味します。
その働きぶりを見て、
「この人は正社員として雇うレベルにない」
と思われた場合、
正社員への昇格はありません。
直接雇用される場合であっても、
正社員ではなく契約社員を
打診されることもあり得ます。
これも、派遣先企業の判断によります。
さらに言うと、
「全く貢献していない」
と判断され、
契約期間終了とともに
「雇い止め」
になる可能性も十分にあります。
つまり、紹介予定派遣を利用すること
イコール
必ず正社員になれる、
と考えるのは見通しが甘すぎる、
と言わざるをえません。
もちろん、
普段の仕事ぶりを見て
評価されるわけですから、
良い面もあります。
面接で自分を大きく見せることだけに
長けていて、
いざ入社後に仕事をさせてみると
どうも自己ＰＲほどではない・・・
という人はいくらでもいます。
そういう「アピールだけがうまい人」
に出し抜かれずに済むので、
自己ＰＲは苦手だが、
仕事には自信がある、
という人には適しています。