■第93回 正しいことを主張するとクビになる
居酒屋などを経営する
ある大手飲食チェーングループが、
未払いの残業代約1200万円を支払う
と報道されました。
最近よく聞く未払い残業代の話ですが、
この件では、
会社がさらに悪質な対応をしています。
未払い残業代の発覚は、
労働基準監督署への内部告発が発端です。
理不尽極まりないのですが、
その居酒屋チェーンは
内部告発をした社員を
「労働基準監督署に
行くような社員がいるのは、
会社にとってリスクである」
として退職を迫ったのです。
そして、応じないと見るや
解雇に追い込んでいます。
(ほぼ確実に不当解雇です)
これは、例えば犯罪者が
「俺が犯人だと警察に通報しやがって」
と怒りくるって通報者に報復するのと
同レベルの理不尽さです。
しかし、世の中にはこうした事例は
呆れるほどたくさん起きています。
「法律ではこうなっているのだから従え」
と主張するだけでは解決しないことが
あまりにも多すぎるのが現実です。
厳しいことを言うようですが、
「自分は正しいことを主張している。
だから勝てる」
と考えるのは甘いとしかいいようがありません。
(そのような状況がまともかどうかは別問題にして)
正しいことを主張するのにも、
いかに主張を通すかを組み立て動かないと、
圧倒的な権力を持った相手
(この場合会社)
にねじ伏せられてしまいます。
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■ 編集後記
私は、退職にあたっての相談を
日々受けているのですが、
やはり
「法律的に正しければ、
希望を直接伝えれば聞いてもらえる」
と考えている方の割合はかなり多いです。
しかし残念ですが、
そんな会社はごくごく少数です。
「これは法律違反です」と伝えて、
会社が
「あ、気付かなかった。すぐに訂正します」
などという反応をするでしょうか?
私にご相談いただく方は、
一部上場企業の方も
割といらっしゃるのですが、
そんな会社は聞いたことがありません。
(まあ、そういう会社に勤めている方は
私なんかに相談しないでしょうが・・・)
主張を通すには、
通すための準備が要るのです。
2.Q&A
Q.正しいことを主張するだけでは、
会社から理不尽な扱いを受ける・・・
という話ですが、納得いきません。
正しい主張をしているわけですから、
こちらの主張が認められるべきです。
例え、社内では
自分の言い分を認められなくても、
外部に相談すれば、
正しいことを主張している者が
勝つのは当然ではないでしょうか?
最終的には正しい側が勝つのですから、
「正しいことを主張するのはダメだ」
のような書き方をするのは
良くないのではないのですか?
会社が間違っているのであれば、
正されるべきは会社の方ですし、
それを指摘できるのは、
内部の社員しかいません。
会社の間違いを指摘して、
それを理由に不利益な扱いを
することは禁止されています。
だからこそ、
会社に必要以上に萎縮する必要は
ないのではないでしょうか?
A.ご相談者様の主張は、正しいです。
会社は、法的に間違っていることを
指摘されたら、改めるべきです。
そして、指摘した社員に
不利益な扱いをしてはなりません。
しかし、そんなきれい事で
会社が回っていると考えるのは、
自滅に続くだけの道となります。
サービス残業を労働基準監督署に
通報した社員がいたとします。
もちろん、法律では
サービス残業を労基に通報したことを
理由に、
その社員を不利益に扱うのは
禁止されています。
「だから、正しいことはどんどん言うべきだ」
などと単純なことを主張するのは、
はっきり言いますがバカの考えることです。
会社には、社員の評価権があります。
「労基に通報した」
こと以外の理由を持ち出して来て、
その社員を閑職に追い込むことぐらい、
造作もありません。
営業成績がノルマに満たなかった、
同僚から嫌われている、
仕事に対する姿勢が問題・・・
評価を下げる理由など、
いくらでも見つかります。
会社が、周りの社員に
「●●は、職場の雰囲気を悪くしているよな?」
と圧力をかければ、
みんなそろって
「●●さんは、職場の雰囲気を悪くしています」
と答えます。
誰も、自分の職業を失いたくないし、
会社から狙われたくないからです。
ご相談者様は、
そのような状況が間違ってる、
外部に話を持って行き、
正すべきだ、
と書かれています。
しかし、評価を下げたことを
「通報の報復である」
と立証するのは
大きな手間がかかります。
そう簡単に立証できるものでも
ありません。
このため、
正面から会社に挑むのは、
どうやっても
分が悪い勝負になるのです。