整理解雇(リストラ)が合法になる条件

1.整理解雇(リストラ)が合法になる条件

リストラという言葉に、良い印象を持っている人は少ないでしょう。

今や誰でもクビ切りの対象になる時代で、いつ自分の身に降りかかってきてもおかしくないからです。

まさか俺がリストラされるなんて・・・
まさか俺がリストラされるなんて・・・

さて、多くの企業は、経営状況が悪くなると、従業員の一部をためらいなく解雇するようになりました。

これが一般的にいうリストラですが、解雇の種類としては「整理解雇」に該当します。

解雇である以上、正当な解雇となるには厳しい条件を満たしている必要があります。

具体的には、下記のように、多くの条件を「全て」満たしていなければなりません。

1.30日前に解雇予告をするか、30日分の予告手当の支払いを行う
2.法令で定める、解雇禁止理由に違反しないこと・・・妊娠中の解雇など
3.就業規則、労働契約、労働協約の規定を守ること・・・就業規則に定められた解雇事由に該当していない場合、正当な解雇にはなりません。
4.解雇理由に合理性、相当性があること・・・社長が気に入らない、という理由で安易に解雇することは認められていません。
5.経営上、人員を削減する必要性が認められること
6.整理解雇を回避する努力を会社が十分に行っていたこと
7.会社が選定した解雇対象者の選定理由が妥当である
8.労働組合や労働者の代表と、会社が十分に協議した事実がある

これらの条件を全て満たすというのは、ちょっと考えると非常に厳しいことが分かると思います。

しかし、それにも関わらず、リストラを行う企業は多数あります。

そして、多くの企業では、上記のようなリストラが「正当な整理解雇」になる条件を満たしていません。

リストラといっても、会社がやりたい放題にできるわけではない、ということぐらいは覚えておいた方が身の安全がはかれます。

2.リストラ後の大量採用は合法か

昔とは違い、今は経営状況が悪くなると、ためらいなく整理解雇(リストラ)に踏み切る企業が増えています。

それをしないと、会社そのものが生き残れないと考えているからです。
本当にそうなのかどうかは別ですが。

さて、経営悪化の責任は誰にあるのかというと、第一義的には経営陣にあるはずです。

昔、某有名企業の社長が「業績が悪いのは、社員が働かないから」と口走って問題になりましたが、社長がどう考えていようが、経営悪化の責任は社長を含む経営陣にあります。

にも関わらず、リストラされて職を失うのは一般の従業員です。

つまり、責任が少ない一般社員を路頭に迷わせるわけですから、企業のリストラが正当化されるには極めて厳しい条件を満たさなければなりません。

実際には守られているとはとてもいえませんが、法律上はそうなっています。

例えば、リストラで大量の解雇をした後、同じように大量に人員補充したら、そのリストラは正当なものとして認められるでしょうか?

実はこの場合、リストラは有効になる場合もあるので話がややこしくなります。

正当なリストラになるのは、正社員を整理解雇して、パート・アルバイトに切り替える場合です。

契約社員や派遣社員に切り替えた場合も同様です。

つまり、賃金負担の大きい正社員を整理解雇して、人件費が安い非正規社員に切り替えた場合ですね。

これは、リストラされた本人にとっては納得がいかないでしょうが、正当なリストラとして認められています。

企業全体として、人件費の負担が削減されているからです。

また、言葉は悪いですが「クビ切りしやすい」非正規雇用の割合を増やすことで、企業業績の悪化に対応しやすい体制を作ることも可能になります。

人員の流動性を高める効果がある、ということです。

しかし、正社員を大量解雇した後に、また正社員を大量に雇い入れるといったやり方は、こういったメリットを生み出しません。

給与が高い社員をリストラして安く使える若手社員を採用すれば、確かに人件費の削減は可能です。

しかし、正社員を切って、非正規雇用に切り替えた場合に比べると「人員の流動性」は高くなりませんから、こういったやり口は認められていないのです。

私がリストラされるなら、あなたの役員報酬を減らすのが先です!
私がリストラされるなら、あなたの役員報酬を減らすのが先です!

3.既婚女性だけをリストラ

整理解雇(リストラ)を実施するにあたっては、リストラ対象者の選定が合理的でなければなりません。

上司が、気にくわない社員から順番に選んで会社から追い出す、といったことはとても合理的とはいえず、認められていません。

リストラ対象者を選ぶにあたっては、選定基準を明確に作成し、公平に適用しなければならないのです。

裁判所が過去に行った判断では、下記のような条件を満たしている社員の場合、リストラ対象者として選ぶことに合理性があると認められています。

1.企業との関係が希薄である(正社員は強く、アルバイトは弱いという具合に、主に雇用形態で判定されます)
2.悪化した経営状況の立て直しに貢献する期待が薄い
3.解雇されても生活への影響が少ない

さて、このような基準を見た場合、最もリストラの対象に選ばれやすいのが、「既婚の女性」です。

「旦那の給料があるのだから、解雇されても生活していけるでしょう?」
と会社から言われ、切り捨てられた女性は過去に膨大な数に上ります。

言うまでもありませんが、こういったリストラは全く合理性を欠いています。
早い話が、無効です。

リストラの対象を選ぶ場合、上記基準の1→2→3の順番で判断されます。

つまり、
1.まずは非正規雇用からリストラ、正社員は後
2.残った正社員から、今後の企業立て直しに貢献しなさそうな者をリストラ
3.2.で残った社員の中から、同じ程度の評価なら生活が行き詰まる可能性が低い人からリストラ
といった具合です。

このような基準にそって考えると、「女性だから」という性別でリストラ対象にすることは明かに不当です。

なお、「生活への影響が少ない」というのは、扶養家族がいなかったり、共働きの場合などを指します。

リストラを宣告されたからといって、泣き寝入りはいけません。
リストラを宣告されたからといって、泣き寝入りはいけません。

4.まとめ

・リストラは、他のあらゆる努力をしても経営状態が好転しない場合の「最後の手段」。安易なリストラは正当なものとはいえません。

・リストラ後、同じ待遇の社員を補充するのはダメ。正社員を大量解雇した後に、パート・アルバイトを採用するのは人件費抑制の観点からリストラの正当性が認められやすい。

・既婚女性だから、という理由でリストラを行うのは明らかに不当。