職業訓練と延長給付

1.職業訓練と延長給付

就職先を探すのは、ハローワークでなくても可能です。

しかし、ハローワークでなければ不可能な就職支援制度があります。

それが、職業訓練受講者に対する失業保険の延長給付です。

職業訓練で技能を身につける。
職業訓練で技能を身につける。

「ハローワーク所長の指示によって」職業訓練を受講した場合という条件はつきますが、この場合、職業訓練の終了日まで失業保険を受給することができます。

つまり、90日で失業保険が切れる場合でも、180日の職業訓練を受講していれば180日目までは失業保険が出ることになります。

これは、「このまま再就職活動を続けても、なかなか厳しそうだ」という人に対してハローワークが行う就職支援です。

つまり、職業訓練を通じてできることの幅を広げ、就職しやすくなる人材に育てることを目指しているのです。

そして、職業訓練に専念できるよう、カリキュラムの終了日までは失業保険が延長されるのです。

職業訓練を受講すると、失業保険はどこまで伸ばせるのでしょうか?

ざっと、訓練を受講するまでの待機期間(最大90日)、訓練期間(最大2年)、職業訓練終了後も再就職がコン案で、ハローワークから特別に延長が認められた期間(最大30日)と、2年4ヶ月もの延長が可能です。

すでに、最初の失業保険が何日だったか?というのが無意味なほどの延長が可能です。

職業訓練には、失業保険支給の前倒し効果もあります。

自己都合退職の場合、3ヶ月の給付制限があることはすでに述べました。
その場合も、職業訓練を受講すれば給付制限がなくなるのです。

その他の手当は、下記のようになります。
●受講手当・・・訓練を受講した日、1日あたり500円
●通所手当・・・交通費(月額最大42,500円の範囲内で、実費支給)

 

2.失業保険をもらえない人への給付

前項では、職業訓練を受講することで失業保険の給付日数を延長できることをお話しました。

しかし、こういった措置は、あくまで失業保険をもらえる立場の人に適用されるものです。

雇用保険に加入していない人向けの職業訓練があります。
雇用保険に加入していない人向けの職業訓練があります。

もともと失業保険をもらえない場合は、職業訓練を受けること自体は可能ですが、失業保険の延長などの給付を受けることはできません。

これは、就職して短期間に解雇されてしまったような人には、職業訓練を受ける機会すら与えられないことを意味します。

さすがにそれでは理不尽過ぎるということで、実は失業保険がもらえない人向けの救済措置が設けられています。

それが、求職者支援制度です。

実地母体は自治体が設置している求職者総合支援センターです。

ここが主体となって、あるいは外部に委託して職業訓練を実施しています。
この職業訓練を受講している期間は、毎月10万円の給付金が支給されます。

雇用保険をもらえず、再就職もままならない、という人にとっては最後に頼れる制度といってもいいでしょう。

事実、国はこの求職者支援制度を、「生活保護を求める前の、第二のセーフティーネット」として位置づけています。

なお、「失業保険をもらえない」という受講対象者の中には、「失業保険を全部もらいきってしまった」「しかし、就職先が決まらなかった」人も含まれます。

そのような人も、受講を検討されるとよいでしょう。

なお、通常の職業訓練を受講した後に求職者支援訓練を受講するというのは認められていません。

 

3.公共職業訓練の費用

ハローワークの受講指示を受けた上で公共職業訓練を受講すると、訓練の終了日まで失業保険が延長されることは、これまでも繰り返し述べてきました。

失業保険をもらいながらスキルアップが計れたり、新たな技能や技術、知識を得ることが可能ですから、かなり優遇されているといってもよいでしょう。

さて、この公共職業訓練校、はたして費用はどの程度かかるのでしょうか?

職業訓練について書かれた情報サイトを見ると、「すべて無料」などと書かれていますが、これは間違いです。

教科書代などの実費はかかります。
教科書代などの実費はかかります。

教科書代などの実費は別途発生します。

これは、半年など訓練期間が長くなってくると2万円といった具合に、気軽に出せる金額ではなくなってきます。

また、溶接や建築など、技能系の職業訓練の場合、作業着や作業帽、安全靴が必要となり、これも費用がかかります。

また、訓練生対象の保険に入ることを求められるコースもあります(3,000円強)。

それぞれは決して高いものではありませんが、積み重なると結構な出費となります。

あらかじめ、どの程度の費用が必要かを計算しておき、お金の用意をつけておきましょう。

また、多くの方が職業訓練の授業料は完全に無料だと思っていますが、これも間違いです。

3ヶ月や6ヶ月といった短期の職業訓練コースでは、確かに授業料は無料です。

しかし、1年以上の長期に渡って実施される職業訓練コースの場合、1年あたり12万円程度の授業料が必要です。

分割も可能ではありますが、決して無料ではありません。

1年以上の訓練期間がある職業訓練コースはほとんどが4月入学だったり、学卒者対象だったりと、あまり縁がある人は多くはないでしょう。

とはいえ、どこかのいい加減な情報サイトを見て「職業訓練の授業料は全部無料」と思い込むと、せっかく選考試験に合格したのに授業料が用意できない、といった悲惨なことになりかねません。

注意が必要です。

 

4.まとめ

・公共職業訓練を受講すると、失業保険が延長される

・失業保険をもらえない人、失業保険をもらいきった人が利用できる職業訓練もあり、これを求職者支援制度という

・職業訓練は学費がかからないことが多いが、教科書や作業服代はかかる。また、1年など長期に渡る職業訓練では年間12万円程度の学費が必要になる。「職業訓練は全部無料」などと書いてあるサイトが多いが、頭から信じるのは危険。