被保険者期間は通算できる・会社を辞めるタイミング

1.被保険者期間は通算できる

前回のお話で、「雇用保険の加入期間が重要」ということはご理解いただけたかと思います。

特に、雇用保険被保険者期間が5年未満か5年以上かで、失業保険を受給できる日数に大きな差がつけられます。

ということで、雇用保険の加入期間は長い方がよいのですが、複数の会社に勤めていた場合、この被保険者期間は合算することが認められています。

といっても、いくつか条件がありますので、今回はその条件を詳しく見ていくことにしましょう。

通算の条件をしっかり確認。
通算の条件をしっかり確認。

●失業保険を受給していないこと

雇用保険の被保険者期間は、失業保険をいったん受給すると、ゼロに戻ります。

つまり、被保険者期間を引き継げるのは、「失業保険を全く受給しないで、再就職した場合」に限られます。

これは、失業保険を全額もらっていなくても同様です。

例えば、90日失業保険がもらえる場合に、20日分だけ支給された時点で再就職となった場合を見てみましょう。

この場合、失業保険をもらっていますので、次に雇用保険に加入した場合は0ヶ月目からの再スタートとなってしまいます。

●空白期間が1年以内であること

失業保険を1円ももらっていないにも関わらず、雇用保険の被保険者期間がリセットされてしまうことがあります。

それが「1年以上の空白期間がある場合」です。

この空白期間、具体的には「前職を退職して」から「次の会社に入るまで」を指します。

多くの人が勘違いしているのですが「失業保険をもらう手続きをしてから1年」ではありません。

「退職後、海外でゆっくりしたい」
と、何の手続きもせずに出国。

海外で1年過ごし、戻ってきてから失業保険の受給申請をした・・・

この場合、失業保険は1円たりとももらうことができません。
期限切れだからです。

また、もともと失業保険をもらう気がなかった場合でも、雇用保険の加入期間がゼロに戻りますので、将来的にマイナスに作用する可能性が高くなります。

このように、知らずに空白期間を作ってしまい、後から大後悔している人はかなり多いのです。

この落とし穴は失業保険のルールでも最悪の部類に属しますので、最大限の警戒をしてください。

特に「退職後はのんびり過ごしたい」と考えている場合は危険です。

 

2.会社を辞めるタイミングをずらす

失業保険を少しでも長い期間もらうには、退職前から戦略的に準備をする必要があります。

この中で、もっとも簡単で確実に効果が見込める単純な方法があります。
それは、「会社を辞める日をずらす」というものです。

なぜかというと、すでにお話した通り、雇用保険の加入期間や退職時の年齢によって、失業保険をもらえる日数が大きく変わってくるからです。

この、失業保険をもらえる日数が大きく変わる時期であれば、少し退職時期を遅らせるだけで大きく得をすることができます。

辞めるタイミングもよく考えて。
辞めるタイミングもよく考えて。

少し判りにくいと思いますので、具体的に見てきましょう。

●自己都合退職の場合

自己都合退職の場合、失業保険の受給日数が大きく増えるラインは10年・20年です。

雇用保険の加入期間が10年未満であれば90日ですが、10年を超えると120日に増えます。
20年なら150日です。

つまり、雇用保険の加入期間が9年9ヶ月といった時期に退職を考えた場合、あと3ヶ月だけ我慢すると後から大きなリターンがあります。

通常、こうしたことは退職前に考えることはあまりありません。

このため、会社を辞めてから気づいて後悔している人は多いのです。

●会社都合退職の場合

会社都合退職の場合は、自己都合退職に比べると少し複雑です。

雇用保険の加入期間だけではなく、年齢も影響してくるからです。

雇用保険の被保険者期間で区切られているのが5年、10年、20年です。
年齢の区切りは、30歳、35歳、45歳、60歳です。

60歳を超えると、逆に失業保険をもらえる日数は減ります。

これらのライン近くにいるときは、会社を一刻も早く辞めたいという状況であっても少しだけ退職を先送りにしたいところです。

3.退職前は残業して、休日出勤もする

退職前は、残業も休日出勤も積極的に行いましょう。

お世話になった会社に少しでも恩返しを・・・
と言いたいところですが、そのような理由からではありません。

失業保険の1日あたりの金額は、退職直前6ヶ月の給与を基準に決められることはすでに説明しました。

ということは、退職直前の給与を増やしておけば、失業保険の基本日額も連動して増えることになるからです。

といっても、この手口は残業手当がきちんと出る会社であることが前提になります。

世の中には残業手当どころか、休日出勤代も支払わない会社がたくさんあります。

このような会社にお勤めの場合は、残念ながらこの方法は使えません。

しかし、もうひとつ使える手当があります。

それは、「通勤手当」。

すでにお話した通り、失業保険の計算に使う平均賃金日額は各種手当を含み、その中には当然通勤手当も含まれます。

であれば、退職前6ヶ月に遠いところに転居しておけば通勤手当も高くなり、結果として失業保険の日額も増えるのです。

通勤手当が高いと、失業保険も高い。
通勤手当が高いと、失業保険も高い。

「そのためにわざわざ引っ越しなんかしないよ」
確かに、そう思われた人も多いでしょう。

しかし、退職後に転居を考えている場合は、退職後といわず在職中にしてしまった方がよいのです。

なぜかというと、いったん会社を辞めてしまった人間は、賃貸住宅を借りることすら困難になるからです。

少しハードルが高いのは確かですが、残業手当すら払おうとしない会社に勤めていても使える数少ない方法です。

4.まとめ

・雇用保険に加入していた期間は、最後に勤めていた会社の分だけではない。通算ができる。ただし、失業保険を受給したり、再就職まで1年超の期間が空くと通算は不可となる。

・会社都合退職の場合、年齢によっても失業保険をもらえる日数が大きく変わってくる。

退職間際にこのラインを超える場合は、退職する日程を後ろにずらした方が大きくお得。

・失業保険の日額は、退職前180日の給与額で決まる。この給与額には通勤手当や残業手当も含まれるので、残業代が出る会社に勤めているなら積極的に残業すると失業保険の金額が増える。