自己都合退職と会社都合退職

1.自己都合退職と会社都合退職

失業保険を何日もらえるのか?
また、3ヶ月の受給制限期間がつくのか、つかないのか?

すでに見てきたように、これらの分かれ目は、「自己都合退職」か「会社都合退職」かによります。

自己都合退職とは、「正当な理由がないのに、自分の意思によって会社を辞めた退職者」のことを指します。

この場合の正当な理由というのは、会社がウソをついて入社させたなど、「誰が見ても会社が悪い。そりゃ、辞めるよね」というケース以外の場合です。

例えば、正社員として入社したのに、知らない間に契約社員として入社したことになっていた、給料30万円を提示されて入社したのに、実際の給料は20万円だった・・・といった具合です。

ハードな職場もいい経験になるぞ!といった言葉に言いくるめられてはいけません。
ハードな職場もいい経験になるぞ!といった言葉に言いくるめられてはいけません。

それ以外で、辞めた理由が個人的な事情によるものである場合は、自己都合退職として処理されます。

この場合、失業保険をもらえる期間は短いですし、3ヶ月の受給制限期間もついてしまいます。

なお、懲戒解雇など、会社から辞めさせられた場合であっても本人に重大な責任がある場合は自己都合退職と同様に扱われます。

例えば、会社の経費を使い込んでいた場合などです。

会社都合退職は、「退職したのは会社の責任」ということが客観的に見て明らかな場合に認められます。

典型的なのが、事業縮小などに伴うリストラです。

これは、勤めている社員本人に直接責任があるわけではありませんので、「辞めたのは本人の責任ではない」ということで、失業保険の支給でも優遇されているのです。

具体的には、失業保険の受給日数は自己都合退職にくらべて2倍になることもありますし、3ヶ月の受給制限期間もつかず、退職の翌日から支給されます。

このように、圧倒的に会社都合退職の方が有利です。

「キャリアアップのため別の会社に移る」といった事情でもない限りは、こちらを狙っていきたいところです。

 

2.会社都合退職となる条件は

退職するには、会社都合退職が有利。

では、どうやったら会社都合退職が認められるのか?が次に気になるところだと思います。

会社が倒産した場合や、人員整理で会社から「辞めて欲しい」とはっきり言われた場合などは分かりやすいですが、会社都合退職が認められるのはそういった場合だけではありません。

会社に入ってから「入社するときに聞いていた給料と全然違う」ことが判明したり、「辞めさせることを目的に露骨な配置転換を行う」などの理由で会社を辞めた場合でも、会社都合退職が認められます。

あれ?給料が10万少ない・・・
あれ?給料が10万少ない・・・

このような、「退職したのは、会社の責任」といえるケースは、次のような場合が挙げられます。

1.解雇(懲戒解雇は除く)
2.採用時に聞かされていた条件と、実際の条件が著しく違っていたことを理由に退職した場合
3.2ヶ月連続で、給料が遅配になった、あるいは一定額以上が減額された
4.賃金が15%超下落したことを理由に退職した(給与が減額になって6ヶ月以内に退職することが条件。また、降格に伴う減額などは対象外)
5.離職直前3ヶ月連続で、残業時間が月45時間を超えた場合
6.行政機関から指導を受けているにも関わらず、危険な労働環境を改善しなかった場合
7.労働者の能力を活かすなどの配慮がない配置転換
8.有期労働契約で3年以上働いていたが(1回以上契約更新されている必要あり)、会社の方から契約更新を拒否された場合。自分で拒否した場合はこれに該当しまない
9.上司や同僚などから社内いじめを受けていた場合
10.会社からの退職勧奨
11.会社の責任により3ヶ月連続で事業が休止した場合
12.会社の事業内容が違法であることを理由に退職した場合

それぞれの退職理由については、上記で触れた以外にも細かい条件があります。

これだけを見て「自分は会社都合退職が認められるのだ」と考えて辞めてもかなりの確率で失敗しますので、実際に行動を起こすのはもっと詳しく調べてからにすべきです。

3.ネットの会社都合退職できる理由を信じると痛い目にあう

当サイトも含めてですが、ネット上には「こうすれば、会社都合できる」という情報があふれています。

しかし、このようなサイトを見て「あ、私該当する!」と早とちりして退職すると、高い確率で自己都合退職で処理されてしまいます。

こんなはずじゃ・・・と思っても手遅れです。
こんなはずじゃ・・・と思っても手遅れです。

恐ろしいことに、「会社都合退職が認められる条件」に該当しているにも関わらず、自己都合退職で処理されてしまうのです。

なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか。

それは、会社都合退職できると考えた人の多くが「ハローワークで、その主張をするだけ」だからです。

つまり「口で主張を述べるだけで自分の言い分が通る」と考えてしまうのが全ての間違いの元なのです。

ハローワークは、その人が言っていることがどれだけ信憑性があっても、その人の話だけを聞いて会社都合退職を認めることはありません。

何が必要かというと、主張を裏付ける証拠が必要なのです。

すでに、「会社都合退職が認められる条件」を述べましたが、それらの条件に自分が該当することを立証するための証拠が必要なのです。

しかも証拠は、退職後に収集するのはかなり難しいことが多いでしょう。

ですので、退職を決意したら、会社都合退職と認められる主張を裏付けるだけの証拠を収集した後に辞める必要があるのです。

このように、知識と実践のギャップを埋めておかなければ、望む結果は得られません。

多くの人は、知識だけで戦いに臨み、討ち死にしてしまっているのです。

これは、情報を提供している人たち自身が、実際の現場を知らないでサイトを作っている弊害だと私は考えています。

4.まとめ

・会社都合退職だと、失業保険がもらえる日数が増えたり3ヶ月の受給制限期間がなかったりと、自己都合退職に比べると圧倒的に有利。こちらを狙いたい。

・会社都合退職が認められる理由は多いが、細かい条件がついている。短絡的に「自分は会社都合退職できる!」と油断して、酷い結末になる人が後を絶たない。

・現場を知らない人が「会社都合退職できる方法」を語っているサイトは多い。ネットの情報を再加工した程度のサイトを信用するとだいたい失敗する。